猫の毛のお手入れはブラッシングがよい。写真はわさびちゃんちの保護猫とうふちゃん。

文/一乗谷かおり

猫がお風呂嫌いなのはよく知られています。もちろん、メインクーンのように水浴びが好きな品種の猫や、個体差でお風呂大好きという猫もいます。でも、水に濡れるのはちょっと…というのが一般的な猫の反応です。

とはいえ、換毛期で夏毛に入れ替わる時期ですし、フケが出る猫もいますし、夏はダラーっとフローリングに寝そべって暑そうにしていますし、やっぱり猫もお風呂、入った方がいいんじゃないの?と、つい思ってしまいます。

そこで、トリミングやシャンプーなども行なってくれる猫専門病院「マオキャットクリニック」の院長、高野のり子さんに話を伺いました。

マオキャットクリニック院長の高野のり子さん。

■猫に体臭がないわけ

「そもそも、猫は肉球以外からは汗をかかないため、体臭がほとんどないのです。健康であれば、外で暮らしている野良猫でも臭くないのです」(高野さん)

高野さんによると、猫が臭くないのには、ちゃんと理由があるそうです。

犬と違って猫は、単独でハンティングをする動物。獲物に存在を気づかれないようそっと近寄り、一瞬の間にとびかかって襲います。いくら忍び足で近づいても、臭いが強いと獲物にバレてしまうため、できるだけ臭いが出ない体質だし、猫自身も臭いを発しないよう努力をしているのです。

「猫がよく身体を舐めているのも、毛繕いがてら、私はいませんよ~という演出のために、できるだけ臭いを消すために身体をぬぐっているのです。猫の舌の臭いがつきそうなものですが、そこは猫自身が猫的にナチュラルと考える臭いをキープしているつもり、ということです」

猫は臭いが身体につくことを嫌うものですから、シャンプーをしたらシャンプーの臭いが気になって嫌なはず。

「もし必要があって猫の身体を洗うことがあっても、動物専用で無香料のシャンプーを使った方がいいですね」

でも、そもそも猫の身体を洗う必要性は滅多にないと高野さんはいいます。

「コーニッシュレックスなど、ほとんど毛がなく、皮脂汚れが出やすい品種は例外ですが、ほとんどの猫は基本的にお風呂は必要ありません。泥や土、埃などの環境由来の汚れや排泄物などの自然な汚れ程度であれば、洗わなくても猫自身が舐めて綺麗にします」

身体の皮のひだに皮脂汚れがたまりやすい品種のコーニッシュレックス。一緒に暮らす人間としてはあちこちに汚れが付着するため定期的に洗ってしまいますが、本猫は汚れてもさほど気にならないようです。

■猫を洗うのは人間の都合 猫にはいい迷惑?

でも、野良猫を保護して家に入れる時は? 粗相をしてべとべとになってしまったら?

「人間が自分の住む空間を汚されたくない、一緒に住む上で猫にも綺麗でいて欲しいと思うのであれば、濡れタオルなどで拭いてあげるだけで充分です。ノミなどの虫は専用の薬で取りますし、毛玉などもお風呂に入れるよりもブラッシングの方が効果があります」

むしろ、洗って生乾きの状態でいて、風邪をひかせてしまう方がよほど猫にとってかわいそうだと高野さん。

「ドライヤーが嫌いな猫もいます。猫が自分で舐めるにしても通常のグルーミングより時間がかかって、風邪をひいてしまうこともあります。人間がびしょ濡れの服のままでいるのと同じですから。乾きも早い濡れタオルがオススメですね」

下痢でうんちまみれになってしまっても、汚れている部分をお湯ですすいだり濡れタオルでぬぐえば充分。嫌いなことを無理強いして、余計なストレスを与えるのはかえってよくないそうです。

では猫のフケ対策はどうしたらいいのでしょうか?

【次ページに続きます】

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