取材・文/鈴木拓也

すべきことがあるのに、つい先のばししてしまう……。
これは、多くの人に染み付いた心のクセではないだろうか。筆者も、納期の近い仕事を抱えているのに、なぜかゲームをしてしまうことはしょっちゅう。
「にんげんだもの」と言ってしまえばそれまでだが、どうせなら克服したい。そう決心した人におすすめしたい1冊が、『先のばしをなくす朝の習慣』(三笠書房 https://www.mikasashobo.co.jp/c/books/?id=100896700)だ。
毎日同じことを続けることの重要性
本書の著者は、印南敦史さん。「サライ.jp」でもおなじみの、「書評執筆本数日本一」の書評家、作家である。1年に700本もの書評を書くというから、ちょっとの先のばしも許されない立場。試行錯誤の末に生み出した先のばし対策が、惜しみなく開陳されている。
その1つが、「毎日同じことを続ける」というもの。日常のルーティンを確立し、それを愚直に続けることがすすめられている。
何も難しい話ではない。朝起きたら、コーヒーを自分で淹れて飲む、外に出て散歩するといった何気ない習慣を、その日の気分でしたり、しなかったりは避けよということ。一見ささいなことであるが、続けてみれば小さな達成感を得られる。さらに、「意外と心地よいもの」で、明日もまた続けようというモチベーションにもなる。やがて、ルーティンに組み込まれたものは生活にリズムを与え、その後の面倒な仕事も、テキパキとこなすようになる。
印南さん自身も、新聞を読むといった朝の雑事に始まり、仕事を終えて就寝するまでの流れをルーティン化している。仕事と生活のオン・オフをあえて切り分けず、一筋の川の流れのようにこなしているそうだ。
乗らない仕事はいったんやめる
そうは言っても、ときには気持ちの面ではかどらない仕事もある。その場合はどうすべきか?
印南さんの答えは明快だ。
「乗らない仕事は途中でやめよう」と言い、次のようにアドバイスする。
たとえば、仕事を進めていく過程で、「気分が乗らない仕事」が目の前に陣取って邪魔をするなら、必要以上に自分を追いつめるべきではありません。そうではなく「気分が乗らないから、いったん途中でやめよう」と思い切ることも、ときには重要なのです。(本書58~59pより)
もちろん、やめてそのまま放置しては、職業人生に差し障りが出てくる。あくまでも、しばしの間だけ「寝かせる」のである。そして、別のタスクに着手するのだが、それは寝かせた仕事と毛色の異なるものとする。たとえば、帳簿の仕事をしていたのなら、商品の発送を手伝うというふうに、違うものであればあるほどいい。素早く気分転換が進み、元の仕事に再度取り組もうという気持ちも、復活しやすいからだ。
完全に断ち切るべきはNGルーティン
本書の端々には、ルーティンを確立することの大切さが説かれているが、例外もある。
それを印南さんは、「NGルーティン」と呼んでいる。つまり、やってはいけないルーティンのことだが、たいていそれは無意識のうちにしていて厄介だ。
たとえば、仕事の合間にスマホを取り出して、興味がないにもかかわらず、SNSを見続けてしまったり……。これこそ、まさにNGルーティン。気分が一新されるなど、プラスの要素があればまだしも、ただただ時間の浪費であるなら、後に残るのは自己嫌悪だけだ。
こうした、わかりやすいもの以外にも、日常生活を精査すればまだまだ出てくるはず。印南さんは、一例として「世間話や噂話」を挙げる。
同僚やパートナーとのちょっとした会話は息抜きとしても効果的ですが、必要のない世間話、あるいは悪口や噂話を延々と続けていたのでは、あまりに時間がもったいない。そもそも建設的ではありません。(本書165pより)
こうした諸々のNGルーティンとは、中途半端に付き合うのでなく、完全に断ち切るよう印南さんはアドバイスしている。これはなにも、修行僧のような厳しい禁欲生活を送れという話ではない。印南さんは、毎日の晩酌は欠かさないが、それは息抜きになるし、日々の仕事を頑張る励みにもなるから。生活に潤いを与えるならば、それは「有意義なルーティン」であり、残しておいてかまわない。
本書には他にも、先のばしクセから脱却するためのTipsが数々盛り込まれている。ゴールデンウイークが明けた今、気持ちも新たにチャレンジしてみては?
【今日の仕事力を高める1冊】
『先のばしをなくす朝の習慣』
取材・文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。












