取材・文/坂口鈴香

末松隆久さん(仮名・55)の妻、由紀さん(仮名・54)は50歳を過ぎたころ、若年性アルツハイマー型認知症だと診断された。由紀さんの症状の進行は急激だった。末松さんの仕事中、一人にしておくことができなくなり、近くにある実家で預かってもらうことにしたのだが……
若年性認知症になり豹変した妻。限界だったが、妻のメモを発見して……【2】はこちら。
暴力を振るう妻。ショートステイからも断られ
ところが、次第に由紀さんは実家の両親にも暴言を吐くようになった。両親も80代半ばだ。「何かあったら怖い」と言うようになり、仕事中はショートステイに預かってもらうことにした。
しかし、今度はショートステイでも暴言を吐くようになった。同年代の利用者がいないのがストレスだったのではないかと、末松さんは推測する。
年末、預けていたショートステイから「奥さんが他の利用者さんに暴力を振るったので、もう預かれません」と連絡が入った。正月も仕事があるのに、どうすればいいのか。窮した末松さんは、ケアマネジャーに連絡。急遽、老人ホームに入居することになった。見学も、比較もできないまま。由紀さんにとっても突然のことだった。
「そのころはコロナ禍で、通院するとき以外は外出もできません。面会はできましたが、私が帰ろうとすると、『何で私はここにいないといけないの!』と責められる。『仕事に行かないといけないから。また来るから』と伝えると、なんとか納得してくれてはいましたが」
グループホームに移ることに
今思えば、このホームのケアは良かったとわかる。ただ、月20数万と高額だった。障害年金と、市からの難病給付を足しても苦しい。1年ほど後、グループホームに移すことにした。
「3施設見比べて、そこが一番自宅に近いので面会に行きやすく、月16万と手ごろでした。障害年金などを引くと、月6~7万で済むのは助かりました。それにそのグループホームは、線路が近くて、鉄道好きな“鉄子”の妻には気持ちが安らぐだろうと思ったんです」
由紀さんにグループホームに移ることを伝えたのは、引っ越しの当日。
「『今日からこっちね』と。広いホームから9人ユニットの家庭的なグループホームへと環境の変化も大きく、それがまたストレスになったのでしょう。妻は部屋の隅から動かない。他の入居者から『こっちにおいでよ』と誘われても嫌がっていました」
それが、1か月ほど経って慣れてくると、今度は暴言が出るようになった。グループホームからは「他の方に危害を加えるようになると困るので、何とかしてほしい』と言われるようになった。末松さんが、「出て行けということですか」と聞くと、「そういうことではないが、何とかしてほしい」という返事。担当医に相談して、薬を増やすことになった。
「薬のせいでしょう、突然動けなくなったこともあります。その薬をやめたら動けるようになりましたが、暴れないようにするために、薬で押さえつけているようなものだったのだと思います」
そもそも入居時から、このグループホームには疑問を抱くことが度々あった。
若年性認知症になった妻。グループホームを替えておけばこんなことには……【4】につづく。
取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。











