正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。

Google 先⽣やデジタルデバイスの出現により、便利になった反⾯、情報の中⾝については⼗分な吟味が必要な時代になっております。あなたの「漢字の知識」は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。

「脳トレ漢字」今回は、「不束」をご紹介します。平安の昔から続く、日本人の心の機微に触れながら漢字への造詣を深めてみてください。

「不束」は何と読む?  

「不束」の読み方をご存じでしょうか?  

正解は……
「ふつつか」です。

『小学館デジタル大辞泉』では「気のきかないさま。行きとどかないさま。不調法」とあります。「不束者」(ふつつかもの)という形で使われることが多く、「未熟で行き届かない者」という意味を持ちます。結婚式のスピーチや、新年のご挨拶などで「不束な娘ですが」「不束者ではございますが」といった表現を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

「不束」の由来

「不束」の語源は「太束」(ふとつか)で、「不束」は当て字であると言われています。「太くて丈夫なさま」という意味もあり、「短くて太い柱のような、どっしりとした頑丈さ」を表していました 。平安時代初期頃まで、これは誉め言葉として使われていたそうです。太くしっかりした様子が、立派で頼もしいイメージだったのですね 。

ところが、時代が進むにつれ意味が変わっていきます。女性の美の基準が「ほっそりとしてしなやか」に移り、「太束」は次第に「野暮ったい」「ぶかっこうで下品なさま」「気のきかない、不調法な様子」と、否定的なニュアンスを帯びるようになりました。細やかな気遣いが求められる文化の中で、太く無骨なイメージが「配慮不足」「未熟」「能力が劣っている」と転じていったのです。そこから「不」の字を当て、「不十分なさま」「行き届かないさま」という現代の意味が定着したわけです。

「不束者ですが」は死語になりつつある? 

昭和のホームドラマや結婚式のシーンでは、「不束者ですが、末長くよろしくお願いいたします」というセリフがお決まりでした。しかし、令和の今、この言葉を耳にする機会は減ってきているように感じませんか? 

結婚の挨拶においても、「へりくだりすぎる」と敬遠される傾向があります。「自分を卑下するよりも、前向きな言葉で挨拶したい」と考えるカップルが増えているのでしょう。「未熟な二人ですが、力を合わせて温かい家庭を築きます」といった表現の方が、現代の感覚にはマッチしているのかもしれませんね。

***

いかがでしたか? 今回の「不束」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 自分を大きく見せることばかりが求められがちな現代だからこそ、あえて「不束」と口にできる心の余裕を持ちたいものですね。

来週もお楽しみに。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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