日本から片道約5時間、時差も1時間と少なく、気軽に訪れられる香港。19世紀後半から20世紀初頭のイギリス統治下時代を経て、さまざまな国や地域の人々が集まるエネルギッシュな町となった。

食のジャンルも幅広く、早朝のお粥屋さんに深夜営業の甘味処、手頃な屋台から洗練されたレストランまで四六時中賑わいを見せる。

朝8時、ビクトリアハーバーに面した「アベニュー・オブ・スターズ(星光大道)」を散策。ここは香港映画で活躍した人物を讃えるため建設された。
零時近く。夜景をペン画でスケッチする人など、夜も賑わう「アベニュー・オブ・スターズ」。
きらびやかなエリアとは裏腹、昔ながらの顔を見せる九龍城区。

まずは、気楽なテイクアウト専門店『德興魚蛋公司』へ。魚介の練り物を茹でたフィッシュボール(魚蛋)は香港のソウルフードだ。もちっとした弾力ある食感が独特で、鍋の具材にも多用されるという。こちらではスパイシーなカレー風味のタレをからませ、紙カップに入れて供されるため、散策のおともにもってこい。

德興魚蛋公司(タックヒンフィッシュボールカンパニー)

マスとウナギを使ったローカルフード

香港屋台の名物、魚蛋(フィッシュボール)の専門店。すり身団子を茹でて、カレーソースなどで味わう、買い食いに適した品。
小麦粉や添加物は使用せず、毎朝5時から、夫妻で仕込みをはじめる。

九龍城福佬村道76號地舖
電話:+852 2382 0646
営業時間:9時〜18時
定休日:無休

続いて九龍半島の繁華街として知られる尖沙咀(チムサーチョイ)へ。目抜き通りのネイザンロードを中心に高層ビルが立ち並ぶ。いっぽう込み入った路地も多々あり、日本で昭和レトロを演出した酒場が多く見られるように、香港も1980年代の屋台の雰囲気をまとう店が注目を集めている。

『女人街食飯公司』は、かつての賑やかな町並みを模したつくりで、働くスタッフの姿も活気にあふれる。料理は昔ながらの庶民的な広東料理。しっかりとした味付けでビールによく合う。

女人街食飯公司(レディースストリートシクファンカンパニー)

80年代の屋台をオマージュしたレトロ酒場

古き良き香港の町並みを再現。モンコック地区・女人街の1号店に続き、昨年開業。
「高湯(カオタン・上等なだし)で煮込んだ干し海老と野菜の春雨鍋」など昔ながらの料理が揃う。

尖沙咀棉登徑8號凱譽大廈地庫A號舖
電話:+852 2388 6111
営業時間:17時30分〜23時30分
定休日:無休

日本では馴染みのない潮州料理

広東料理のひとつ、潮州(ちょうしゅう)料理は潮州市や汕頭(スワトウ)市の料理を指す。干した牡蠣や魚介の乾物、魚の浮き袋など海産物のだしを巧みに使い、広東料理のなかでも、繊細で滋味ある味わいが特徴だ。『樂口福酒家』はガチョウ料理も名物で、内臓肉とともに滷水(ルウスイ)という醬油と酒、砂糖に八角を加えたスープで煮込む。よく煮込まれたガチョウのスライスはやわらかく歯切れもよい。内臓もしっとりと旨みを蓄え、辛すぎず甘すぎず、絶妙な味わいだ。

樂口福酒家(ロックハウフォクレストラン)

古式ゆかしい潮州料理を堪能

1954年に創業。潮州料理は油をあまり使わず、日本人にとって馴染みやすい。
ガチョウ肉のスライス盛り合わせは内臓も煮込まれている。
前菜の盛り合わせ。

九龍城候王道1-3號地舖
電話:+852 2382 7408
営業時間:11時~13時
定休日:無休

香港島の歩道橋から、対岸の夜景を望む。

九龍からフェリーで10分ほどで香港島の湾仔(ワンチャイ)エリアに。電氣街という坂道の途中に佇む『MaisonES』。香港生まれで上海出身のオーナーシェフ、エスター・シャムさんは、

「低温調理やオーブン焼きなどフランス料理の技術に中華の技法と調味料、香辛料やハーブを組み合わせることで、従来にはない食感や風味の体験をしてほしい」と語る。たとえば、ベシャメルソースにオイスターソースを合わせるとコクが増し、海鮮や野菜との相性が高くなる。甘鯛の松笠焼きには甜麺醬(テンメンジャン)を生かしたフランス料理のソースをあしらい、和食の技法に中華とフレンチを融合させた。
 
また、甘い食材と合わせ革新的なデザートにしたという「チョコレートムース・ヘーゼルナッツパフェ」はエスターさんの最新メニューで、

「少し辛く、痺れと独特な香りを持つ青花椒油(アオホアジャオユ)を用いて、チョコレートの自然な甘みと調和させ、鮮やかなコントラストを意識しました」という言葉の通り、新たな味覚を体感できる。

MaisonES(メゾンイーエス)

中華料理のエッセンスをフレンチの技法に生かした

和食の手法を生かした「甘鯛フィレの松笠焼き」。中央のソースは甜麺醤と白ワインバターを合わせたもの。
ひと口でつまめるタルトのような「アミューズブーシュ」はタラバガニとラクサエスプーマ(※スープを泡状にしたもの)にライムの搾り汁を合わせて。
ほんのりとしたスパイシーさに目を開く「チョコレートムース・ヘーゼルナッツパフェ」。
オーナーシェフのエスター・シャムさん。モデルとして活躍した経歴も持つ。

灣仔電氣街1號恆德大廈UG樓B號舖
電話:+852 2521 8011
営業時間:12時〜15時、18時〜23時(土曜は11時30分〜16時、18時〜23時、日曜は11時30分〜16時)
定休日:無休

香港ならではの飲茶を堪能

同じく湾仔エリアにある『家全七福酒家』はチャーシュー饅や皮付き仔豚の焼き物、鳩の丸焼きなど伝統的なメニューが並ぶ、飲茶の名店だ。

「中華料理はだしが命。だしが店の顔になり、いかに食材の鮮味を引き出せるかが大切です」と話すエグゼクティブシェフの陳國偉さん。鮮味とは中国語で、食材が持つ本来のおいしさといった意だ。
 
その言葉通り、焼売や蒸し餃子の肉だねはどれも旨みが深い。そのままでも充分おいしいが、「つけダレとの相性も試してほしい」と陳さんがオイスターソースやXO醬をすすめる。なるほど。少し添えると旨さの輪郭が際立つ。

家全七福酒家(セブンスサンレストラン)

香港随一の飲茶を味わう

海老と豚肉の旨みが凝縮された「蒸し焼売」。皮の黄色はクチナシで色付け。
「皮付き仔豚の焼き物」は長時間火にかけ丸焼きにしたもの。パリパリと香ばしい皮を食べたのち、ふわっとジューシーな身をいただく。ともに甜麵醬をつけて味わう。
料理すべてを取り仕切るエグゼクティブシェフの陳國偉さん。

灣仔駱克道57-73號粵海華美灣際酒店3樓
電話:+852 2892 2888
営業時間:11時30分〜15時、18時〜23時
定休日:無休
 
飲茶とは中国茶を楽しみながら点心を食べることで、古く唐の時代にはじまった習慣だ。当時の中国には茶館、茶居、茶室と呼ばれるお茶を飲む場所が賑わった。
 
現在も中国茶を扱う専門店が多く、九龍城にある『茗香茶莊』は、香港に唯一残る炭火焙煎の茶商だ。炭火を灰で覆い、長時間かけて茶葉に火を入れることで香ばしく甘い香気成分が出るそうだ。
 
おいしい記憶がたくさんあればあるほど幸せになれるという、香港のことわざ「食得係福」のように美味満載の旅がここにある。

茗香茶莊(ミンヒョンチャソウ)

香港に唯一残る、炭火焙煎の茶専門店

炭火で焙煎した鉄観音茶を試飲することもできる。
中国茶の集積地である香港。1963年に九龍で創業したお茶専門店は現在2代目のマイケルさんが切り盛りする。

九龍城侯王道 77-79號
電話:+852 2716 3698 
営業時間: 9時〜19時
無休

取材・文/山﨑真由子 撮影/齋藤 明 デザイン/小柳英隆(雷伝舎)

サライ2025年6月号大特集は『超「国宝」祭り』

 

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