文/印南敦史

写真はイメージです。

年齢を重ねるにつれ、頻尿など「トイレのこと」で悩む機会は増えていくもの。ある意味では逃れられない悩みでもあり、仕方がないことなのかもしれない――。

というのが、多くの方々にとってのこれまでの認識ではないだろうか?

ところが泌尿器科医である『頻尿・尿もれ自力でできるリセット法』(高橋 悟 著、アスコム)の著者によれば、そもそも「老いと切っても切り離せないもの」だという認識が間違っているようなのだ。

それは、本書の以下の記述にも明らかだ。

20歳以上で77.9%
40歳以上では82.5%
こんなに多くの人が、なんらかの排尿トラブルを抱えているというデータがあります(「日本排尿機能学会2023年疫学調査」より)。(本書「はじめに」より)

若い人が思いのほか多く、どうやら尿の悩みを抱えている日本人は想像以上に多いようなのである。

ただし、「トイレが近い」「なかなか出ない」「出しても、出し切っていない感じがする」などいろいろある尿の悩みが「ほうっておいてはいけない」ものであることは間違いないようだ。

とはいっても、すぐに病院に行けということではない。尿の悩みと共存したままだと、どうしてもそれが気になってしまうという、そのこと自体が問題なのだ。そうなってしまうと、やりたいことができなかったり、心から楽しめなくなるなどの影響があるからである。

だが著者によれば、尿トラブルは思わぬことが原因になっている場合もあり、生活習慣を変えることで改善できるものでもあるようだ。具体的にいえば、生活習慣改善のポイントは「水分」。水分のとり方と出し方を気にかけるだけで、かなり変化が出るというのである。

「トイレが近いのは病気かもしれない」と思って、泌尿器科を訪れる人がいます。けれども診察してみると、「単に水分をとりすぎているだけだった」という人がよくいるのです。
「頻尿」は病気の1つとされていますが、病気とまではいえず、単なる水分の過剰摂取や頻尿を招いているケースもかなり多いのです。(本書105〜106ページより)

医師が使うガイドラインに、頻尿は「1日に8回以上」と記されているのだそうだ。とはいえ、猛暑の夏に戸外で汗を流しながら過ごせば5時間トイレに行かなくても平気なのに、寒い冬には2時間おきにトイレに飛び込むというようなこともあるだろう。気候や環境の影響もあるだけに、一概にはなんともいえないのだ。

ですから「1日に9回行くから頻尿」などと杓子定規にとらえる必要はないのです。「1日に8回以上」というのは、1つの目安にすぎないと思ってください。
(中略)
頻尿で死ぬことはありません。頻尿で生活に不便を強いられている人だけが、生活習慣を改善して、治せばいいのです。(本書106ページより)

なお、水分が足りないと血液がドロドロになって心筋梗塞や脳梗塞になってしまうと思っている方もいらっしゃるかもしれない。だが現在、水分を多く摂取するとそれらのリスクが減ることを示した研究はないと著者は認識しているという。「水分を多めにとると脳梗塞の再発リスクが減る」という研究が1つあるものの、あくまで脳梗塞の既往歴がある患者さんが対象だというのだ。

当然ながら水分は大切だが、「血液をサラサラにするために、どんどん水分をとらなくては」と信じ、必要以上に水分を摂取する人がいるのも現実だということ。というよりも単純な話で、水分にも適正な摂取量があると考えるべきなのだろう。

だとすれば1日の水分摂取量の目安を知りたいところだが、体重60kgの人なら、1日の適正な水分摂取量は次のとおりなのだそうだ。

・食事に含まれる水分で1L
・それ以外の飲み物で1〜1.5L(本書108ページより)

つまりは合計で2〜2.5L、2Lのペットボトルなら、1〜1と1/4本分ということになるので、意外と少ないことがわかる。

だが、なにかと見逃してしまいがちなこともあるようだ。それは、「お酒」も水分量に含めて計算する必要があるということ。たしかに水分量について考える際、お酒のことは忘れてしまいがちかもしれない。しかし、お酒と一緒にチェイサーとして水を飲むことも少なくないので、その点も忘れずにおきたいものだ。

『頻尿・尿もれ自力でできるリセット法』
高橋 悟 著
1650円
アスコム

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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