
最近は、連絡もメモもスマートフォンで済ませることが増え、手で文字を書く機会がぐっと減りました。そのせいか、「読めるのに、いざ書こうとすると出てこない漢字」が増えていませんか?
以前は迷わなかったのに… と、ふとした瞬間に衰えを感じることもあります。便利な時代だからこそ、頭の中にある「引き出し」をたまに開けておきたいもの。
この記事を通じて、読む・書く・意味を確かめながら、漢字の力を心地よく保っていきましょう。
「脳トレ漢字」今回は、「木瓜」をご紹介します。古くから日本の庭で親しまれてきたこの漢字への造詣を深めてみてください。
「木瓜」は何と読む?
「木瓜」の読み方をご存じでしょうか?
正解は……
「ぼけ」です。「もっこう」とも読みます。
一般的に、庭木として愛でられるバラ科の落葉低木を指す場合は「ぼけ」と読みます。春先に赤や白、ピンクの可愛らしい花を咲かせる、あの植物ですね。
一方、「もっこう」と読む場合は、日本の伝統的な文様である「木瓜紋」(もっこうもん)を指す場合です。神社の御簾(みす)の縁や、織田信長の家紋としても有名な、あの優美な形の紋所です。

「木瓜」の由来
では、なぜ「木の瓜」と書いて「ぼけ」と読むようになったのでしょうか? その由来は、この植物が秋に結ぶ「実」の形にあります。
ボケの木は、花の季節が終わると、楕円形の硬い実をつけます。この実の形が、瓜(うり)に似ていることから、中国では「木瓜」(もっか)と呼ばれていました。「木になる瓜のような実」という意味ですね。
夏目漱石の『草枕』にも、木瓜の花についての記述があります。「木瓜は面白く咲く花である。枝は頑固で、かつて曲がったことがない。そんなら真直かと云ふと、決して真直でもない。(中略)そこへ、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。柔らかい葉さへちらちらつける。評して見ると木瓜は花のうちで愚かにして悟ったものであろう」というような一節をご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。
枝に、ポツリポツリと咲く花の風情。そこには、日本人が好む「侘び寂び」の美学が凝縮されているように思えます。
木瓜の魅力
木瓜の花は赤、ピンク、白と多彩で、200種以上の品種があります。寒い冬の終わりを飾る「先駆者」らしい花です。実は食用にもなり、熟すと甘酸っぱい香りがして、カリンに似た実を乾燥させて漢方薬に使われてきました。
ただし、生で食べることはできませんので、観賞用として楽しむのが一般的。最近は盆栽や枝物として人気で、庭園のアクセントにぴったりです。

***
いかがでしたか? 今回の「木瓜」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 春先にこの花を見かけたら、ぜひ「ぼけの花だ」と読み方を思い出してみてください。
来週もお楽しみに。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











