取材・文/ふじのあやこ
一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、家族のこと。過去と今の関係性の変化を当事者に語ってもらう。
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ミニメイド・サービス株式会社は、家事分担に関する意識調査(実施日:2024年11月1日~11月10日、有効回答数:20代〜70代の既婚者219人、インターネット調査)を実施。調査では、82.1%の女性が「自分が主に家事を担当している」と回答した。そんな家事負担の状況について、満足しているのは26.4%にとどまっている。さらに、「結婚期間ごとの家事分担の満足度」を見ると、結婚して5年未満の夫婦では16.7%が家事分担に対して「非常に満足」していると回答したものの、6〜10年目では15.8%、11〜20年目では8.9%、20年以上の夫婦では2.8%という結果に。結婚期間が長くなるに連れて、徐々に満足度が低下することがわかった。
今回お話を伺った千鶴さん(仮名・49歳)は、26歳で実家を離れて上京。結婚して以降は夫婦で帰省するだけでなく、1人でも実家に帰るようにしていた。親のことを気にするのは、子どもとしての義務だと思っていた。【~その1~はこちら】
母親は夫婦だけの生活になり、料理することを拒否した
年に数回しか帰省できていなかったが、そのときの両親は仲良さそうに見えた。夫婦で帰省するときには家事を手伝うこともあったが、千鶴さん1人だけで帰省したときには家事は母親がすべてしてくれたという。
「私が一緒に暮らしていたときもほとんどの家事は母親がしてくれていました。私はたまに料理を作ったり、洗濯を畳むくらいでした。離れて暮らすようになってからは、帰省して滞在するのは数日ということもあり、その間のすべての家事を母親はしてくれました。
母親は家事に対するマイルールが多くて、一緒に暮らしていたときから母親のルールと違ったら怒られることもあったし、怒りをぶつけられながら手伝わなくていいと言われることもあったので、私も父も家事は任せるようになっていました。両親2人きりの生活になっても、家事は母親がしているんだと思っていました」
最初に家の家事についての異変に気付いたのは、食器棚に入った食器に埃がたまっていたこと。
「食事のときにお皿が足りないと思って食器棚を開けてお皿を取ろうとしたら、母親から『汚いからダメ』と言われたんです。母親は食洗器からお皿を出してくれました。私は、食器棚の手前にあったお皿を取ろうとしたのに、それにも埃がたまっていたことに違和感を覚えました」
なぜかそのことを母親に聞くことができなかった千鶴さんは、父親と2人きりのときに食事事情について質問をした。父親からは「もう何年も母親は食事を作っていない」と打ち明けられた。
「両親は共働きで、母親も私が大学生のときぐらいからフルタイムで働いていました。父親と2人の生活になって、母親は『同じくらい働いているのに自分だけ家事をするのはおかしい』と急に父親に言ってきたそうです。家事の中で母親が一番嫌いだったのは料理だったみたいで、その次の日から料理を作らなくなったと。ずっと料理をしてこなかった父親が50代から料理ができるわけもなく、そこから出来合いのものばかりになっているようでした」
【老いるだけの人生では「一緒にいる理由がない」。次ページに続きます】