日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。

解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)

昭和26年、北海道生まれ。北海道大学医学部卒業。久留米大学医学部教授などを経て、平成15年、糖尿病などの生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を開業。

危険な“糖質中毒”という負の連鎖

糖質摂取がさらなる疲労を呼ぶ

脳が命令するままに糖質を摂れば、ドーパミンが分泌され、一時的に快楽を感じます。「元気が出た」と思えたのはドーパミンによるもので、言ってみれば「脳の錯覚」です。

これは、ぐっすり眠ったり、入浴して血行改善されたり、マッサージで筋肉がほぐれたりして「疲れが取れた」のとは、まったく別物です。

それどころか、糖質摂取はさらなる疲労を呼び起こします。

ここで、図4を見てください。

糖質を摂ってドーパミンが分泌され、快楽を得るところで終わればいいのです。一度で終われば問題ないけれど、実際には繰り返されます

というのも、上がった血糖値はインスリンの作用で下がっていきます。

しかも、血糖値が急激に上がり得られた快楽が大きいときほど、インスリンも大量に出て今度はドカンと血糖値が下がります。

血糖値が下がりすぎれば、不快な症状に襲われます。そこで、「また糖質を摂って元気になろう」という負の連鎖に陥るのです。

糖質を摂取してドーパミンが出れば一時的に元気になるものの、その後の低血糖で疲労感が増し、それを解決するためにまた糖質を摂り、ドーパミンが出て一時的に元気になるものの……この状態は、紛れもなく“糖質中毒”です。

糖質中毒は、薬物やニコチンの中毒(依存症)となんら変わらないのですが、なぜか問題視されません。米飯も砂糖も子どもの頃から口にしてきた食べ物だけに、まさか中毒に繫がるなんて誰も思わないのでしょう。

しかし、ここで非常に重要なことが見落とされています。人々が子どもの頃から米飯や砂糖を口にしてきたのは、ごく最近の話だということです。

長い人類の歴史から見たら、米や小麦粉、ましてや砂糖はとても新しいものであって、「安全だからいくらでも食べていいだろう」というわけにはいきません。

***

世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』

現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。

『疲れない体をつくる最高の食事術』
牧田善二/著 四六判208ページ 小学館刊 1650円(税込)

 

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