印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ(1840-1926)は、一瞬の光をとらえる鋭敏な眼によって、自然の移ろいを画布にとどめました。
モネの晩年は、最愛の家族の死や自身の目の病、第一次世界大戦といった多くの困難に直面した時代でした。そのなかで、彼の創造の源になったのがジヴェルニーの自邸の庭に作られた睡蓮の池でした。
そして、睡蓮の池を巨大なカンヴァスに描いて部屋の壁面を覆い尽くす「大装飾画」の構想が、最期にいたるまでモネの心を占めることとなりました。
国立西洋美術館で開催の「モネ 睡蓮のとき」は、晩年の創作を中心にモネの芸術の変容を辿る展覧会です。(10月5日~2025年2月11日)
本展の見どころを、広報事務局にうかがいました。
「このたび、パリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開となる重要作を多数含むおよそ50点が来日。さらに日本各地に所蔵される作品も加え、本展は日本では過去最大規模の〈睡蓮〉が集う展覧会となります。
モネが初めて睡蓮を描いたのは、1895年から1897年のこととされています。《睡蓮、夕暮れの効果》は、その最初期のものとされる作品の一つです。
モネが晩年に構想した「大装飾画」(Grande Décoraition)とは、睡蓮の池を描いた巨大なパネルによって楕円形の部屋の壁面を覆うというものです。最終的にパリのオランジュリー美術館に設置されることとなる記念碑的な壁画の制作過程において、70歳代の画家は驚嘆すべきエネルギーでもっておびただしい数の作品群を生み出しました。《睡蓮の池》もそのうちの一つです。
1908年頃から次第に顕在化した白内障の症状は、晩年の画家の色覚を少なからず変容させることになりました。最晩年には、大装飾画の制作と並行して、複数の独立した小型連作が描かれました。モティーフになったのは、庭の太鼓橋や枝垂れ柳、ばらのアーチのある小道などです。
モネが〈睡蓮〉の装飾画もしくは「大装飾画」の構想において、当初から意図していたのは、始まりも終わりもない無限の水の広がりに包まれ、安らかに瞑想できる空間でした。それは、ルネサンス以来、西洋画の原則をなした遠近法(透視図法)による空間把握と、その根底にある人間中心主義的な世界観に対する挑戦であったと言い換えられるでしょう」
モネをモネたらしめた〈睡蓮〉尽くしの圧巻の会場に、ぜひ足をお運びください。
【開催要項】
モネ 睡蓮のとき
会期:2024年10月5日(土)~2025年2月11日(火・祝)
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://www.ntv.co.jp/monet2024/
開館時間:9時30分~17時30分、金・土曜日は~21時(いずれも入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日、10月15日(火)、11月5日(火)、12月28日(土)~2025年1月1日(水・祝)、1月14日(火)
(ただし10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)、2025年1月13日(月・祝)、 2月10日(月)、2月11日(火・祝)は開館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
巡回:京都市京セラ美術館(2025年3月7日~6月8日)、豊田市美術館(6月21日~9月15日)
取材・文/池田充枝