今よりも待遇が良い仕事や、やりがいのある仕事をしたいと、キャリアアップを考える場合、どのように行動すれば理想に近づいていけるのでしょうか? やみくもな行動は後悔に繋がりかねません。そこで、プロティアンキャリア協会代表理事の有山徹さんの著書『新しいキャリアの見つけ方』から、人それぞれの特性や仕事に対する価値観を再発見する方法をご紹介します。

文/有山徹

「キャリア」とは、本来は自分で考えるもの

キャリア・プラトーは、その組織内での頭打ち感から生まれます。しかし、それは個人の責任ではなく、その人のキャリアが組織(会社)に握られてしまっているのが原因です。会社の都合で部署を異動させられたり、自分の本当にやりたいことと異なる仕事をさせられたりといったことが、個人のキャリアを蝕んでしまうのです。利益を追求することを最優先するあまり、多くの会社では依然としてキャリアの多様性は認められていません。

もともとキャリアとは個人が考えるものであり、自分でハンドリングするというのが「キャリア・オーナーシップ」という考え方です。

従来型のビジネススタイルでは、「キャリアのミッション=所属している組織(会社など)の評価」でしたが、プロティアン・キャリアでは、自分のキャリアのミッションは自分がやりたいこと、社会に対して取り組みたいこと、そのものになります。

誰かに握られた、あるいは誰かに依存したキャリアではなく、「自分の人生の経営者」として自律したキャリアを目指すことこそが「キャリア・オーナーシップ」です。 

ただし、組織に所属していること自体が悪いというわけではありません。多くのビジネスパーソンは、何らかの組織(企業など)に属して働いています。それが間違いというわけではなく、組織の中でも自律したキャリアを築いているかどうかがポイントです。

組織を「キャリアの機会を与えてくれる存在」だと認識できれば、それを活用するために所属しているメリットは大いにあります。大きな組織でしかできないこともあり、自分のキャリアにどのように活かしていけるかを客観的に見ることができればいいのです。

もちろん、組織のなかでキャリア機会を得るためには、きちんと貢献して信頼を得ていかなくてはならないので、一方的に「利用してやろう」という姿勢ではいけません。キャリアにおいて組織と自分のミッションの共通点を見出し、依存関係ではなく、お互いにプラスとなるパートナーとしての関係性を築いていくことが重要です。

自分の将来は自分で決められる

日本においては、キャリアを自分で選択できるという教育が、今の40代以上の年代では行われてきませんでした。より偏差値の高い学校、大きな会社に入るために受験勉強をがんばるという努力は推奨されてきましたが、そこに、「自分の将来は自分で決められるんだ」というメッセージは含まれていませんでした。

まわりと同じように勉強して同じように就職活動をして、「できるだけ大きくて有名な会社」に入ることがもっとも成功に近い道だ、と教えられてきたのです。敷かれたレールの上から逸脱することは、悪いことかのようにいわれてきました。

私が新卒で入社した会社を3か月で退職すると決めたときは、清水の舞台から飛び降りる気持ちでした。でも、いま振り返ってみると、長い人生のなかではまだ若く、時間も残されているから、いくらでもなんとかなると思えます。退職するという事実よりも、なぜ会社を辞めるのか、その失敗から何を学んでその後は何に取り組むのかが大事なのです。

しかし、キャリアは自分で考えるものなのですから、レールは自分で敷かなくてはならないはずです。プロティアン・キャリアは、キャリアのレールを自分で敷き、そこを自分で走っていく最先端のキャリアの考え方です。

ここで1つ、現時点においてキャリアを自分事として捉えられているのか、簡単な診断をしてみましょう(図A)。もちろん、満点でなくても問題はありません。未来に向けて1つでもチェックを増やしていけば、より良い未来を創っていけるので、まずはトライしてみましょう。

* * *

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有山徹(ありやま・とおる)
一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事。4designs株式会社代表取締役CEO/founder、国家資格キャリアコンサルタント。早稲田大学MBA。国家資格中小企業診断士。就職氷河期である2000年に早稲田大学卒業、大手食品メーカーに就職するも、より経営に近い成長できる環境を求めて3ヶ月で退職しフリーターに。24歳で中小企業診断士に合格し経営コンサルティング会社に転職、その後、東証一部上場のIT企業、DX企業や医療系ベンチャー企業など事業会社5社で経営企画部長や管理本部長などを経験。MBO後の組織改革や、未上場からの東証一部直接上場(IPO)案件、グループERP導入案件などのプロジェクトリーダーを務めるなど全社プロジェクトマネジメントを得意とする。2019年、経営・キャリア支援を行う4designs株式会社を起業、独立。2020年3月、法政大学キャリアデザイン学部田中研之輔教授と一般社団法人プロティアン・キャリア協会を設立。現在は、大手総合商社、大手電機メーカー、大手石油・化粧品メーカー等へのキャリア開発視点での組織開発支援やキャリア開発の実践支援を行うプロティアン・キャリア戦略塾など、研修や面談を通じて多くの個人に100年・VUCA時代の最先端キャリア開発である現代版プロティアン・キャリアを伝えている。

 

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