【重文】『四季花鳥図屛風』


重要文化財、六曲一双、紙本着色、各151×351.8cm、室町時代(15世紀)。本作は石見国(現・島根県)の領主・益田兼堯の孫の世禄祝いとして文明15年(1483)に描かれたという。それが事実とすれば、雪舟64歳の作となる。
【重文】『益田兼堯像』

重要文化財、一幅、紙本着色、83×40.5cm、文明11年(1479)。雪舟は当時、仏画や肖像画の仕事もこなしていた。益田兼堯は雪舟の庇護者・大内氏と姻戚関係にあった益田家15代当主。武将としての威厳を感じさせる描写が見事。(※本作は展覧会出品作ではありません。)
雪舟絵画の真髄ここにあり
山下裕二さんが2019年に上梓した『未来の国宝・MY国宝』。山下さんが考える“遠くない将来に国宝指定されるに違いない作品、また個人的に極めて思い入れが深く国宝にしたい作品”が数多掲載されているが、雪舟についても「間違いなく未来の国宝」という作品があると語る。それがこの2作。
「『四季花鳥図屛風』については本の中で《これぞ雪舟畢生の大作。執拗に絡みつく枝ぶり。真っ黒い墨による筆勢を強調した岩。「人間・雪舟」の身ぶりがはっきり見て取れる》と既に紹介しています。さらに今回、作品を俯瞰してみて『益田兼堯像(ますだかねたかぞう)』も未来の国宝だなと思いました。同時代に、こんなにリアルな肖像画は他にありません。山水に限らず、これだけ幅広い画題で力量を発揮する画家も珍しい。雪舟の凄さを改めて実感します」
●山下裕二さん(明治学院大学教授、美術史家・65歳)

『倣夏珪山水図』

一幅、紙本墨画淡彩、30.1×30.8cm、室町時代(15世紀)。雪舟が山水画のスタイルを確立するために最大の規範としたという中国南宋時代の画院画家・夏珪に倣った一枚。2017年に雪舟真筆として再発見され話題となった。
【重文】『倣李唐牧牛図(牧童)』『倣李唐牧牛図(渡河)』

重要文化財、一幅、紙本墨画淡彩、30.3×31.2cm、室町時代(15世紀)。

重要文化財、一幅、紙本墨画淡彩、30.3×31.3cm、室町時代(15世紀)。いずれも、中国北宋時代末期から南宋時代初期に活躍した画院画家の李唐に倣った「倣古図」のシリーズ。李唐は山水や牛の絵を得意とした。
【重文】『倣梁楷黄初平図』

重要文化財、一幅、紙本墨画、30.3×31.4cm、室町時代(15世紀)。こちらも南宋時代の画院画家・梁楷に倣った一図で黄初平という仙人を描いたもの。
【重文】『倣玉澗山水図』

重要文化財、一幅、紙本墨画、30.3×31.5cm、室町時代(15世紀)。玉澗は、雪舟も入明時に訪れた、西湖の辺りにある天台宗寺院で書記を務めていたという南宋時代の画僧である。雪舟が、「潑墨」の技法を玉澗から得ていたことを示す作例としても貴重である。
これも雪舟、あれも雪舟|数少ない真筆の中でも多彩な画業を示す
国宝、重文指定の作品を見るだけでも、山水、花鳥、人物、実景描写、更には抽象表現と、実に様々なタイプの画才を見せる雪舟。その多彩さを端的に表すのがここに紹介する通称「倣古図(ほうこず)」シリーズだ。
当時、日本における最高の絵画とは中国宋代の画家たちによる水墨画だった。そこで雪舟はこのような見本帖をつくり「私に頼めば、夏珪風でも李唐風でもなんでもお望み通り」と顧客に見せたのだ。売れっ子画家となるには、顧客のニーズに応えて様々なスタイルで描き分ける能力を備えている必要があったことの証でもある。
●掲載作品のうち、作家名のないものはすべて「雪舟」の作品です。また、特に明記した作品を除くすべての作品は京都国立博物館で開催予定の特別展「雪舟伝説」の出品作です。
※この記事は『サライ』本誌2024年5月号より転載しました。

