「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながるといわれています。
「脳トレ漢字」今回は、「軍鶏」をご紹介します。食欲の秋に、何を食べようかと想像しながら漢字への造詣を深めてみてください。

「軍鶏」は何と読む?
「軍鶏」の読み方をご存じでしょうか?
正解は……
「しゃも」です。
これは、この鶏の原産地であるタイの旧名「シャム」が訛ったものとされています。異国の地名が、そのまま和名として定着したのですね。なんだか異国情緒を感じさせる響きです。
「ぐんけい」とも読みますが、その場合は文字通り、主にその闘争的な性質や品種を指す学術的な文脈で使われることが多いようです。日常会話や食文化においては「しゃも」と呼ぶのが一般的ですので、ぜひ「しゃも」という読み方を覚えておきましょう。
「軍鶏」の由来
では、なぜ「軍の鶏」と書くのでしょうか? その答えは、この鶏が日本にやってきた歴史に隠されています。
「軍鶏」がタイ(シャム)から日本へ渡来したのは、江戸時代の初期と言われています。その目的は、なんと「闘鶏」(とうけい)のためでした。闘鶏とは、鶏同士を戦わせる競技のことです。軍鶏は他の鶏に比べて気性が荒く、闘争心に溢れています。
その猛々しく戦う姿が、まさに戦場で戦う兵士のようであったことから、「軍の鶏」という漢字が当てられたのです。

幕末の志士が愛した味
さて、「軍鶏」と聞いて、ある歴史上の人物を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう、幕末の風雲児・坂本龍馬です。慶應3年11月15日、京都の近江屋で龍馬が中岡慎太郎と共に暗殺された「近江屋事件」。
実はその夜、龍馬は好物であった「軍鶏鍋」を食べるのを心待ちにしていた、という逸話はあまりにも有名です。使いの者が軍鶏を買い求めに行き、戻ってきた時にはすでに惨劇が起こった後だった……。
この悲劇は、軍鶏という食材に、歴史の切ない香りを添えています。龍馬が最後に食べようとした味、と想像するだけで、一杯の軍鶏鍋が特別なものに感じられますね。
もともとは闘鶏用だった軍鶏が、なぜこれほどまでに食通たちを唸らせる食材となったのでしょうか。それは、その肉質に秘密があります。常に闘争に備えているかのような筋肉質の体は、脂肪が少なく、非常によく締まっています。そのため、一般的な鶏肉(ブロイラー)に比べて歯ごたえが強く、噛めば噛むほどに濃厚な旨味があふれ出してくるのです。
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いかがでしたか? 今回の「軍鶏」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? これからの季節、軍鶏鍋で体を温めながら、江戸時代の人々の暮らしに思いを馳せてみるのも一興ですね。
来週もお楽しみに。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











