マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、サライ世代に向けて、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、管理職初心者がやってしまいがちな失敗とその対策について考察します。
マネージャーとプレイヤーの違いを聞かれたときにみなさんは答えることが出来るでしょうか?
優秀なプレイヤーは、出世して管理職(リーダー・マネージャー)になります。しかし、優秀なプレイヤーが必ずしも優秀な管理職(リーダー・マネージャー)になるとは限りません。
管理職になったのであれば、管理職として何をしてよくて、何をしてはならないのかを理解してマネジメントしていきましょう。あなたの良かれと思った、思い付きの発言が組織の問題を引き起こす原因かもしれません。
優秀なプレイヤーほどやってしまう二つのマネジメント
優秀なプレイヤーが、必ずしも優秀な管理職になるとは限らない。こう言い切れる理由を解説していきます。
優秀なプレイヤーが管理職になって失敗するパターンは、大きく分けて二つあります。
一つ目は、細かく部下に指示しなければいけないと考え、「ここはこうしていく方がいい」「こういう方法もあるのではないか」「私だったらこのように進めていき成功したことがある」などと、細かく部下に対して手取り足取り指示、指導をする人です。
二つ目が、「誰よりも率先垂範して」「背中を見て覚えろ」「自身が一番数字を上げていなければ人はついてこないと言わんばかりにプレイヤーの延長を続け、部下についてこさせようとする人です。
実は、どちらもプレイヤーとして優秀であればあるほど、管理職になったときにやってしまうマネジメントです。
では、何がいけないのでしょうか。考えてみましょう。
一つ目は、確かに部下のことを考え、手取り足取り指導をする良い管理職のように感じるかもしれませんが、部下は思考停止し、考える力がつきません。つまり成長しないのです。また、「上司の言った通り実行したが、結果が出なかった」という言い訳・免責の思考を引き起こし、自分には何が足りなかったかを捉えることが出来ないため成長機会を失います。部下が少数であれば出来てしまうマネジメントかもしれませんが、部下の数が増えるとマネジメントコストが膨大となり、結果的に全員に指示を出せないという状況が発生します。
二つ目は、すごいリーダーのように感じるかもしれませんが、プレイヤーとして動く分、部下の管理が疎かになります。言い換えれば、本来の管理職としての役割を果たしていない、責任を放棄していることになるのです。
管理職は、プレイヤー能力の延長ではなく、全く別次元の能力が必要になります。それが「マネジメント能力」です。もちろんマネジメントを本能的に出来てしまう人もいるかもしれませんが、マネジメントは、基本的には学ばなければ出来るようにはなりません。まず、管理職になったらマネジメントを学び、その通りに実行することから始めましょう。
失敗しがちな寄り添いマネジメント
とにかく部下とのコミュニケーション量が大事と考え、よく飲みに行き、1on1を定期的に実施し、部下のプライベートの悩みまで耳を傾け、褒めて励まし、部下のモチベーションを上げようと必死になっていませんか? 決して飲みに行くことや1on1で熱心に耳を傾けることが悪いということではありません。
では、部下のすべての悩みに上司は答えることが出来ますか?
答えられなかったとき、部下は上司に対してどのような感情をいただくでしょうか?
上司が答えることが出来るのは、上司の責任を果たすために与えられた権限範囲のみです。もちろん人間的に優れていれば、すべてに寄り添うマネジメントでも有効かもしれませんが、プレイヤーから管理職になったばかりでいきなり人間力が上がるとは思えません。
だからこそ身に着けるべきが、「マネジメント能力」です。それでは、新任管理職が身に着けるマネジメント能力を紹介していきます。
部下を迷わさないためにルールを設定せよ
管理職になって初めに実施することは、ルールを設定し、そのルールを管理することです。「ルール」と耳にすると縛られる感じがするという方もいるかもしれません。実際に私たちが安心安全に生活することが出来るのは、ルールがあるからです。
例えば、交差点に信号がなかったことを想像してみてください。周りは関係ないという考え方で止まりもせず、すごいスピードで車を走らせる人もいれば、事故を恐れ、なかなか発車出来ずに交通渋滞を起こしてしまう人もいるかもしれません。交差点に信号があることは、私たちにとって当たり前になっているかもしれませんが、市民の安全を考えルールを設定しているということです。組織の中でこのルールを設定することが出来るのが管理職なのです。
では、どこにルールを設定すべきでしょうか。
それは、自身と部下の間の中でズレが生じた部分、部下Aと部下Bの間で擦れが生じた部分には、すべて管理職がルールを定める必要があります。ここでよくやってしまうのが、コミュニケーションで解決しようとする方法です。
「なんでこのような動きになったのか説明してくれる?」「普通は……」「社会人として……」――このようなやりとりをしていないでしょうか? このようなコミュニケーションは、上司と部下ではなく、一個人対一個人の互いのルールや価値観をぶつけ合い、答え合わせをしているにすぎません。生まれてから現在まで育った環境が違うわけですから、そもそも前提条件が一致することの方がまれと考えるべきでしょう。
上司という立場を使って上司の価値観やルールを押し付けるのは、今の時代パワハラに該当してしまうかもしれません。ですから、認識のズレが生じているところにチームとしてのルールを設定する。これが管理職として初めにやらなければならないことになります。
明確な目標を設定し、結果を管理せよ
次に管理職がやるべきことは、部下に対して明確な目標を設定し、その結果を管理することです。
このときのポイントは、必ず、「期限と状態」が明確になるよう、意識して目標を設定することです。
例えば、「10キロメートルを60分以内で走りましょう」という目標設定と「10キロメートルをなるべく速く走りましょう」という目標設定があったとします。前者と後者どちらが明確な目標設定でしょうか? 答えは前者ですよね。後者の場合、速くの基準が不明確なため、ゴールを迎えたときに、「速い」と感じる人もいれば、「遅い」と感じる人もいるかもしれません。仮に本人は「速く」走ったと感じていても、上司が「遅い」と判断した場合、部下は評価を勝ち取ることが出来ないですし、自分では速いと思っているのに遅いと言われても不足を認識することが出来ず、次の改善につながりません。そのため、上司は「期限と状態」を明確にした目標を設定する必要があります。
そして、部下にとって明確な目標を設定することが出来たのであれば、結果まで待つというのが正しいマネジメントです。上司の役割は、目標設定と結果評価です。途中段階で口を出すことや、手取り足取り指導することは、経過介入となり部下の成長機会を奪うことになってしまいます。
また、部下から報告がなされないと、結果的に上司が部下に確認することになってしまいます。確認した結果、上司が思っていた進捗になっていなかった場合、経過介入が始まります。そうならないようにするために「毎日17時までに上司に当日の進捗結果を報告すること」というルールを定めるのです。ルールが定まっていれば、期限を迎えたときに部下から上司に報告がなされます。ここで報告してこないのは、単なるルール違反なので部下を指摘して修正させてください。これが管理職としての正しいマネジメントです。
上司から設定された目標に向かい、考え行動し、期限になったら上司に報告するという状態を作り、部下が仕事に集中できる環境を用意すると、結果的にこの環境下の中で部下は成長し始めます。
まとめ
今回は、マネージャー初心者に向けて、管理職としての失敗マネジメント、寄り添いマネジメントが引き起こす弊害をお伝えした上で、管理職として何をしなければならないのかを解説させていただきました。
一見、厳しいようにも聞こえたり、感じたりすることが多かったかもしれませんが、「時間の感覚」を持ってマネジメントしていくことが大切です。この「時間の感覚」とは、今良いリーダーと言われるのではなく、未来に良いリーダーだと言われるということです。今この瞬間、優しくて寄り添ってくれる管理職であったとしても、自分が成長できなかったら、「あのとき〇〇さんのおかげで、今こんな成長が出来ています」といった部下の発言はでないでしょう。本当に良いリーダーとは、部下を成長させ、チームを勝利に導くリーダーであるということです。マネジメントの基本を押さえて、管理職としての第一歩を踏み出してください。
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