ドラッグストアで陳列されていて、よく目にする漢方薬。「苦いけど体によさそう」「葛根湯は知っているけど……」など、「そもそも漢方ってどんなもの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そんな基本的な漢方に関する疑問や基礎知識を、漢方の専門家にわかりやすく解説してもらいます。第84回のテーマは、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」です。あんしん漢方(オンラインAI漢方)の薬剤師、碇 純子さんに教えてもらいました。
当帰芍薬散とは?
まずは、当帰芍薬散の効能・効果や基本的な飲み方をご紹介します。
1.効能・効果
当帰芍薬散は、不足した体の栄養を補う「補血(ほけつ)」や血行をよくする「活血(かっけつ)」、水分代謝を整えて、余分な水分を体から取り除く「利水(りすい)」などの作用がある漢方薬です。
余分な水分を取り除いて胃腸の働きをよくしたり、血液を増やし血行を促すことで全身に栄養素を届けたりする効果が期待できます。
当帰芍薬散は、昔から月経不順や月経痛、更年期の不調など、婦人科ではよく使われている漢方薬です。ほかにも、貧血、倦怠感、動悸、妊娠中の諸症状(めまい、むくみなど)の治療に使用されることもあります。
2.基本の飲み方
当帰芍薬散は基本的に、食前(食事の約30分前)か食間(食後から約2時間後)に水またはぬるま湯で飲みます。空腹時に飲むほうが吸収がよく、効き目がよく出るとされているためです。
もし、食前に飲み忘れてしまった場合は、食後でも気がついた時点ですぐに1回分を服用しましょう。1日3回タイプは4時間以上、1日2回タイプは6時間以上の間隔をあけて、次の分を服用します。一度に2回分を飲むのはやめましょう。
当帰芍薬散はどんな方におすすめ?
当帰芍薬散は、色白で痩せ型の、疲れやすく手足の冷えやすい方に向いています。一方、体が丈夫で色黒な方や、胃腸が弱い方にはあまり向いていません。
そのほかに当帰芍薬散はどんな方に向いているのか、具体例を3つご紹介します。
1.生理がつらい方
漢方では、月経前症候群(PMS)や月経不順などの生理の不調は、血液の量が不足して体を十分に巡っていないことが原因と考えられています。
当帰芍薬散は、血液を増やし血行を促進して、生理の様々な不調の改善に働きかけます。
2.更年期の不調にお悩みの方
更年期の不調は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少し、ホルモンバランスが乱れることが原因です。
当帰芍薬散は、ホルモンバランスを整える作用が期待できるため、冷えやむくみ、不眠、めまいなどの更年期の不調の緩和にも役立ちます。
3.冷えやむくみが気になる方
血液が全身をくまなく循環していないと、足腰が冷えやすくなります。また、余分な水分がたまって起こるむくみも、血行不良を引き起こすため、体を冷やす原因のひとつです。
当帰芍薬散は、余分な水分の排出と血行促進の相乗効果で、冷えとむくみに同時にアプローチします。
当帰芍薬散に副作用はある? 安心して服用するには
当帰芍薬散のような漢方薬は、西洋薬に比べて副作用リスクが低いといわれていますが、絶対に副作用が起こらないわけではありません。
たとえば、当帰芍薬散の副作用として、発疹、かゆみ、体のだるさ、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が出ることがあります。とくに、胃腸の弱い方は注意が必要ですので、このような体調の変化を感じたときは、すぐに医師や薬剤師などの専門家に相談しましょう。
漢方薬を選ぶ際にもっとも重要なポイントは、ご自身の体質との相性です。体質に合っていない場合、効果が感じられないだけでなく、前述した副作用が起きることもあります。必ず、漢方医学を学んだ医師や薬剤師などの専門家のアドバイスを聞くようにしましょう。
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女性の不調には当帰芍薬散がおすすめ
今回は、当帰芍薬散をご紹介しました。当帰芍薬散は、血液や水分の循環不足による女性特有のお悩みや冷え、むくみなど様々な不調の改善に働きかけます。
漢方薬は、今ある不調を取り除くだけでなく、不調になりにくい体を目指せるところも魅力です。ただし、効果を実感するためには、漢方の専門家にご自身の体質や症状に合った漢方薬を選んでもらい、正しく服用しましょう。
さて、次回は「加味逍遙散(かみしょうようさん)」です。ぜひご覧ください!
<この記事を書いた人>
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