精神科医の和田秀樹さん(63歳)が高齢者の新たな可能性について綴った『シン・老人力』(www.shogakukan.co.jp/books/09389117)。読めば勇気と元気がわくと話題の同書から、高齢者がいつまでも若々しく自分らしく生きるために、「口グセ」にしてほしい言葉について、和田さんが紹介します。
文/和田秀樹
声を出して笑ってみよう
ストレスが溜まると交感神経が優勢な状態になって、血圧や心拍数が上がり、夜はよく眠れなくなります。一方で、消化器系の動きが弱まって食欲も落ちてきます。
疲れる上、栄養状態も悪化するため、さらにイライラしてくる悪循環です。
自律神経は交感神経と副交感神経のセットで構成され、よく「交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキ」にたとえられます。交感神経が優勢な状態とは、アクセルを踏みっぱなしにしているようなものです。
うまくブレーキを踏まないと事故を起こしてしまいます。
ストレスによる交感神経の亢進(こうしん)(興奮)は、多くの病気の発症や悪化に関連していることがわかっており、脳卒中や心筋梗塞の原因になることは、よく知られてきました。さらに近年はガンのリスクが高まるという研究結果も報告されています。
副交感神経を働かせてうまくブレーキをかけるには「話す」「笑う」「歩く」を心がけてください。
免疫力がアップする
「話す」機会を意識して増やすと、脳内の神経伝達物質の動きが活発になります。
LINEなどSNSを使いこなしている方も、昭和の時代に戻ったつもりで長電話をしてみましょう。
また、おかしくなくても「わっはっはっはっ」「あはははは」と声を出して笑ってみることも大切です。
大きく息を吸い込むことになるので副交感神経への刺激になり、心身がリラックスします。ガン細胞やウイルスを退治するNK細胞が活性化して免疫力がアップします。
「歩く」ときは、ダイエット効果を求めてひたすら歩くようなウォーキングより、のんびりした「散歩」をお勧めします。
散歩道の街路樹など、四季折々の変化や一日の小さな変化を感じることで、脳はリフレッシュして活性化されます。
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和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は川崎幸病院精神科顧問、ルネクリニック東京院院長などを務める。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書に『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など多数。