関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
未成年者が、家族の世話や介護に追われ、勉強や部活、友達との交流ができなくなる「ヤングケアラー」問題。ここ数年、社会問題として顕在化した。
その対策として2022年12月、日本財団はヤングケアラーを支援するために愛媛県新居浜市などの自治体と提携。ヤングケアラーを早期に発見して支援するモデルを構築し、これを全国に普及させることを狙う。
今回の依頼者・早智子さん(30歳)は、「私は元ヤングケアラーです。父親(57歳)の不倫で母(享年・53歳)が病み、そのケアに追われて生きてきました」と語る。
「母が53歳で死んだのは、父の浮気のせいです」
早智子さんは「疲れ果てた」という様子で、私達の事務所にいらっしゃいました。実年齢こそ30歳ですが、見た目は40代に見えます。
「相談というのは父のことです。父は女性が好きで、一時期は複数人の愛人がいたこともあります。それに心を病んだ母の世話に、私は追われてきました。私が小学生のときに、父に女性がいることが判明。母は“お父さんがいないと死んじゃう”と自殺未遂をしたり、お酒に溺れたりして、本当に大変だったんです」
母は心を病み、奇行を繰り返すようになったそうです。
「夜中に徘徊したり、過度にダイエットをして30キロ台になったり……母に何かあると、私に連絡が来る。勉強や部活どころではありませんでした。それなのに、母は父が帰って来るとチヤホヤするんです。私なんていないかのようにふるまい、父も母を抱きしめて“愛しているよ”なんて調子がいいことを言うんです。父がどこかに行くと、母はまたおかしくなる」
中学生のとき母に「お父さんと離婚してほしい」と言ったら、「なんてことを言うんだ」と激怒。モノを投げつけられ、顔が腫れるほど叩かれたこともあったそうです。
「とはいえ、落ち着いているときは優しい母なので、家から逃げることは考えられませんでした。かろうじて短大は出たものの、就職はできずバイト生活。母は49歳のときにがんが見つかり、それから4年間の看病に追われ……半年前に、母の希望通り自宅で看取りました。母があの若さで死んだのは、父の浮気のせいだと思っています」
父は母の病状が重くなると、愛し抜いた妻のように接したそう。亡くなってしばらくは女性遊びを控えていたようなのですが、またソワソワしてきたとか。
「母が残したそれなりの遺産もあるので、父の行動を調べてほしいのです。親子の縁を切ることはできませんが、父が別の女性と再婚して、おかしなことになることは防ぎたいのです」
【親の恋愛問題での調査依頼の実態とは……次のページに続きます】