関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

***

今回の依頼者は、東京近郊に住む嘱託社員の正雄さん(61歳)です。「妻(59歳)がランニングから帰ってこないのです」と私たちに連絡をくださいました。2人の間には、独立した息子と娘がおり、彼らと正雄さんは妻を通して会話をしているそうです。

妻は若々しくスリムでポニーテールが似合う。10年前に15歳年下の男性と浮気をしていたこともあるそうです。

【それまでの経緯は前編で】

妻は夫が浮気調査をしていることを知っているのかもしれない

妻の勤務先から妻を特定しようとしましたが、正雄さんは妻の職場を知りませんでした。妻が教えないというより、興味がない様子。ただ、妻が仕事を入れていないのは、水曜日のみだということです。これは正雄さんの会社で大きな会議があり、絶対に出社しなくてはいけない日。妻が家に帰るとしたら、正雄さんが家にいないタイミングだと断定。

正雄さんは家庭よりも仕事を優先してきただけあり、定年退職後の嘱託社員だというのに、勤務日も給料も多い。正雄さんのキャリアは、国立大学の工学部を卒業してから工業機械関連の設計やエンジニアとして活躍後、営業に転身。通常の人が1年に5~10件という世界で、1人で30件以上も成約しつづけたそうです。その営業成績は誰にも破られていないのだとか。

朝7時から正雄さんの自宅前で張り込み開始。この日、気候がよかったこともあり、いつもの探偵カーではなく、立って待機していました。

朝8時に正雄さんが軽快なジャケットスタイルで出勤。その直後に、ほっそりした体型の妻らしき女性が物陰から出てきました。グレーのランニングウエアに黒のキャップをかぶっており、個性を消そうとしている作為を感じました。

妻は周囲のコインパーキングの車をのぞき込んでおり、何かを確認している。明らかに過去に探偵に尾行されたことがある人の行動です。私たちも気づかれないように、さらに気配を消しました。

妻は2時間程度で出てくると、きょろきょろとあたりを警戒しています。そして、少し歩いては立ち止まって、後ろを振り返る。500メートル程度の距離を15分以上かけて歩き、後ろを振り返ります。そして普通に歩いていると思ったら、横道に入ってダッシュ。そんなこともあろうかと、ペアの探偵が駅で待機していたので、走って来た妻を発見。

昼間はお年寄りや子育て中の女性が多い住宅街にある駅で、走っている人はかなり目立つので、すぐに発見することができました。

妻は駅の自動販売機の影で誰かを待っている様子。私たちはカーシェアの車を手配し、その中から見守ります。

【20歳以上年の差をものともせずに……次のページに続きます】

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