関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は会社経営者の光男さん(70歳)です。愛妻と死に別れた後、悲観に暮れる日々を過ごしていましたが、孫のすすめでマッチングアプリに登録。そこで出会い、1年半前に再婚した妻(56歳)の様子がおかしいと私たちに相談にいらっしゃいました。
【それまでの経緯は前編で】
アメとムチを使い分ける妻
光男さんは、悠々自適とはいえ、繁忙期には工事を行っている現場に行くこともある。泊りがけの出張の際に、妻が外出しているような気配があるという。
相談の2日後に光男さんの地方滞在予定があるという。そのときに、妻が外出すると確信し、調査の計画を立てます。
妻は車の免許を持っていないので、電車移動がメイン。都心から90分ほどは離れているターミナル駅に近い光男さんの自宅前で張り込みをします。
光男さんの自宅は、想像以上の豪邸で、ガレージに車は3台。庭に生える木の枝ぶりもよく、「この家を見たら、女性達は目の色が変わるだろうな」と思いました。
朝、8時に光男さんがボストンバッグを持って出てきました。妻が玄関先まで送り出しており、妻からハグしたりキスをしたりしています。いわゆる「魔性の女」にありがちな行動です。相手に冷たくした後に、愛情を示すような行動をすること。おそらく、光男さんが自分に対して不信感を抱いたことを察知した。そこで、濃厚に愛情を示すのです。アメとムチの使い分けが上手なんですね。これはモテる人に多い行動です。
おそらく、妻のこの行動により、光男さんは「妻には何にも後ろ暗いところがない」と考えるでしょう。
案の定、出発から一時間半後、私のスマホが鳴りました。光男さんから「調査のことですが、妻のことは私の取り越し苦労だったと思います。調査に入っていることは知っていますが、もしかしたら証拠が取れないかもしれません」と連絡が入りました。
でも、私は妻が行動すると確信。自宅前での待機を続けます。
昼過ぎになると、胸が深くカットされて、谷間もあらわな服を着た妻が出てきました。女性らしいボディラインで、実年齢には見えません。妻は歩いて駅まで向かうと、そこで待機していたワゴンタイプの車に、慣れたように乗ります。
【不自然なほどはしゃぐ妻……次のページに続きます】