取材・文/ふじのあやこ
厚生労働省が発表した「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)」では、2020年度の婚姻件数は 52万5490組、離婚件数は19万3251組。婚姻件数、離婚件数ともに前年よりも減少しているものの、今もどこかで夫婦が誕生して、夫婦が他人になっている。日本の非婚化がメディアなどで多く取り上げられているが、今回は離婚を経験後に再び家族を求める人たちに、その理由を伺っていく。
「前の妻は自分のどこがダメなのか、結局言ってはくれませんでした。だから自分を変えることもできず、また誰かと一緒になってもまたダメになる繰り返しになってしまうかもしれないという思いが頭にチラつきます」と語るのは、剛志さん(仮名・42歳)。元妻から数年に渡り無視されていたという。
家で王様のように振る舞う父親が大嫌いだった
剛志さんは兵庫県出身で、両親と3歳上と1歳上に姉のいる5人家族に育った。家は典型的な亭主関白な家庭で、小さい頃から命令口調でしか言葉を発しない父親のことをずっと疎ましく思っていた。
「父は反面教師のような存在でした。どう育ったらあんなに偉そうに振る舞えるのか、小さい頃からずっと不思議でしたね。父方の祖父母にはそんな様子はなかったので。
私に対して偉そうに言ってくることももちろん嫌だったんですが、一番嫌だったのは母親に怒鳴る姿でした。泣くのを必死にこらえながら謝っていた母親の姿を思い出すと今でも嫌な気持ちになります」
そんな父親が亡くなったのは3年前。それまでずっと2人の姉とともに母親に離婚を勧めていてたものの、頑なに首を縦に振らなかったという。
「今振り返ると、子どもって残酷ですよね。母親に『あんな父親いらない』とずっと訴えていました。『なぜ離婚しないのか?』と反抗期も重なって強い口調で言ってしまったこともあります。それでも母親は理由を言うことなく『大丈夫よ』と力ない笑顔を私たちに見せていました。
大人になった今思うのは、そんな言葉が母親を追い詰めていたんじゃないかなってことだけ。離婚しなかった理由は今も聞けていません」
【妻は1つずつ家のことを手放していった。次ページに続きます】