関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、春子さん(65歳)です。調査対象は嫁(35歳)と孫(7歳)。近所に住む2人を見かけなくなったことで、私たちに相談をしてくださいました。
最近、「子供に嫌われたくない」とか「刺激したくない」などと考える親が増えており、直接本人には聞けないことを、私たちに依頼されるケースが目立ってきています。
【それまでの経緯は前編で】
半年が経過していると、家には戻らない可能性が大きい
嫁は幸い仕事はやめていないようなので、オフィスビルにベタ付きで調査をしました。
スマートロックの履歴によると、嫁と孫がいなくなったのは半年前。いなくなって2週間程度なら、家を張っていると荷物を取りに来るところなどを押さえられるのですが、半年ではその可能性は薄い。
会社で張り込みをしましたが、今、テレワークの会社も多く、出勤していない可能性もあるので、長期戦を覚悟しました。
3日間の空振りを経て、4日目に嫁の姿をキャッチ。背がかなり高いのですぐにその人だとわかりました。また、絶対に見失わないような派手なバッグを持っている。かなりのオーラを放っており、「この人は魅力的だ」と確信。息子が一目ボレして、強引に結婚したというのも納得です。
17時30分の退社時まで待機して、それからまた尾行を開始。子供を連れ去って行方を消した人の場合、自分が「追われている」とわかっているので、かなり警戒がきつい。かつて4人体制で尾行チームを組んだことを思い出しました。
嫁も駅に行くまでよく振り返っていましたが、最寄りの駅の改札に入るとホッとしたようです。嫁は地下鉄に乗り、東京駅まで移動します。そして、東海道線に乗って、戸塚駅で下車。
そこからかなり歩いたところにあるオシャレな1戸建てに入って行きました。ぱっと見は普通の家なのですが、窓枠やドアの仕様がかなり凝っていてカッコいい。これは後でわかったことですが、嫁の祖母が住んでいた家だそうです。
家の中からは「ママ~おかえり~」という声と、男性のくぐもった声がします。いずれも録音・録画して待機態勢に入りました。
【ゴミを捨てるために出てきたイケメン風の男性……次のページに続きます】