取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
今回お話を伺った朱音さん(仮名・37歳)は現在、旦那さまと子どもとの3人で暮らしています。1年半ほど前には義実家で義母と同居していたそうですが、義父のことが原因で家を追い出されたと言います。
「私は義母のことが好きだったし、会ったこともなかった義父の肩を持つなんて考えもなかった。でも、夫の意見と同じだと思われるのが嫁という立場なんでしょうか」
兄嫁の影響で実家を早々に離れた過去あり
朱音さんは兵庫県出身で、両親と2歳上に兄のいる4人家族。何かを失敗しても笑い飛ばしてくれるような明るい両親の下で育ちます。優秀な兄と学校では比べられることが多かったそうですが、両親から比べられたことは一度もなく、卑屈にならずに済んだとのこと。
「明るくておおらかで、いい意味で適当な両親でした。私、高校受験に失敗しているんです。そんなに難関なところを目指したわけでもなく、当日の体調もバッチリだったのに。高校は滑り止めだった女子高に進学したのですが、母親は『制服はこっちのほうがかわいいじゃない。スカート切って、アレンジしちゃおうか』と明るく言ってくれました。人生最大の挫折だったので楽観的なところには救われましたね。
それに兄がとても優秀だったんですが、『勉強ができるのはお兄ちゃんの個性』と言って、私の個性を大切にしてくれました。私はイラストを描くのが好きだったので、その道に進みたいと思ったのは両親のおかげですね」
朱音さんは実家から通える距離の美術系の大学に進学しますが、20歳のときに実家を離れています。それには兄嫁の存在があったと言います。
「優秀な兄が大学在学中に授かり婚をしたんです。お互い学生でお金もないからと一緒に同居することになって、私は追い出されるかたちで両親から一人暮らしをしてほしいとお願いされて。
兄嫁は両親と気が合っていたみたいですが、私はもうちょっと遠慮してくれよって感じでした。大型連休に帰省したときには薄着で居間にあるソファで兄嫁はぐうたらしていましたから。家族になったんですけど、父よりも大きな態度にはびっくりしましたね。そこから今も兄夫婦と両親は一緒に暮らしているので、私は滅多なことがない限り帰省しなくなっています」
【結婚の条件が義母との同居だった。次ページに続きます】