取材・文/ふじのあやこ

家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、その時に感じた率直な思いを語ってもらう。

母親には感謝があるだけ。父親がいないことに不安はなかった

今回お話を伺った、敦子さん(仮名・35歳)は、29歳の時に大学の時から付き合っていた男性と結婚。現在は都内で2人暮らしをしています。付き合っている時から結婚後も2人の仲は良好。しかしうまくいっていたはずの結婚生活は義父の影響から不仲になってきていると言います。

「私たち夫婦の仲が変わってしまったのは、義父のリストラがあってから。長男である夫が両親を支えるのは仕方ないことだと思います。でも、私たち夫婦までそのことをずっと気にして生活していかなければいけないのはおかしいと思うのです」

敦子さんは千葉県出身で、母親と祖父母との4人家族。物心ついた時から父親はいなかったものの、母親は仕事でしっかりと敦子さんを養い、貧しいと思ったことは一度もなかったと振り返ります。

「これは高校生の時に聞いたんですが、私は妾の子です。その事実を打ち明けられた時も案外すんなり受け入れることができました。小さい頃から父親がいないことはもちろんわかっていたんですが、友人には病気で母親を亡くしていた子がいて、本当に酷い言い方なんですが、父親よりも母親がいないほうがずっと辛いんだろうなって、私はまだ幸せなんだって思っていました。それに母親は父親のいないことで私に苦労をかけないようにしてくれていたみたいで、お金で苦労した記憶はないんです。もしかしたら父親がお金持ちで援助してくれていたのかもと想像したこともあるんですが、詳細は知りません。母親が言いたがらないことを掘り下げても……。祖父母もそのことには一切触れていなかったから」

祖父母の援助もあって大学進学もかない、そこで旦那さまと出会います。

「夫とは学部も別々だったんですけど、大学内に共通の知り合いがいて仲良くなりました。付き合うきっかけは何だったかな。夫は神奈川県出身なんですけど、実家から通うのは少し遠いという理由で都内に1人暮らしをしていて、まぁ少し裕福な感じはしていました。家にいつしか呼ばれるようになって、いつからか周りから公認で付き合っているようになったんです。彼は元々広島県で育っていて中学生の時に家族で引っ越ししてきたみたいで、少し残っている方言が当時はカッコよく見えたんですよね(苦笑)」

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