厚生労働省の発表(2020)では100歳以上は8万人を超え、平均寿命も男性81.64歳、女性87.74歳と年々延びています。けれども、健康寿命は平均寿命よりも約10年短いとされています。そこで、健康寿命延伸を目標として活動するキューサイ株式会社の「100歳まで楽しく歩こうプロジェクト」(https://100aru.com/)は、健康長寿の秘訣を探るべく、元気な100歳以上の方100名と、そのご家族・近親者に生活実態調査を行いました。
元気な100歳以上の方は睡眠時間9時間以上が85%
睡眠時間を聞いたところ、9時間以上睡眠をとっている方が85%となり、そのうち11時間以上寝ている方も46%いました。また、寝る時間は21時台が40%と一番多く、朝起きる時間は6時台が38%という結果でした。さらに、お昼寝は約8割がしており、その時間は31分以上60分未満が一番多い結果となりました。
▷73%が睡眠に満足
また、日々の睡眠に満足しているかを聞いたところ、73%の方が満足されていました。満足度が一番高い睡眠時間は11時間以上だとわかりました。
通常、睡眠時間は年齢とともに短くなる傾向にあるといわれ、さらにコロナ禍で睡眠不足になる方も多いといわれる中で、元気な100歳は日々しっかりと睡眠をとっているようです。
▷良い睡眠をとるためのコツは?
睡眠の満足度が高い方から良い睡眠をとるためのコツを聞いたところ、一番多かったのが、室温の調整、寝具、寝る前のルーティンなどで寝るための環境を整備すること。次に多かったのが日中や寝る前に運動をする人でした。それ以外にも、夕食を食べる時間や少量のアルコール摂取、睡眠導入剤・サプリメントを服用されている方もいらっしゃいました。
元気な100歳以上の方は1日30分以上体を動かしている
1日の中で体を動かす行動や時間を聞いたところ、一番多かったのが、1日30分を超えて体を動かしていると回答した人で、そのうち1時間以上、次に2時間以上が多く、最も長い人では1日約6時間も体を動かしていました。また、体を動かしている時間は平均70.4分となりました。
▷家事をしている人も多い
散歩やウオーキング、買い物での外出も約8割と多くいますが、コロナ禍もあってか、自宅内での食事の支度・調理・片付け、庭仕事や庭の手入れなど、家事をされている方が大半でした。
▷ウオーキングやストレッチ、ラジオ体操で体を動かす!
普段意識して体を動かしていること等を聞いたところ、多い順に、散歩を含むウオーキング、ストレッチやマッサージ、ラジオ体操やテレビ体操などとなりました。中には、雨の日でも自宅で2,000歩以上歩いている方、スクワットを1日2回計30分もされている方、健康増進機器を使用し、座りながらも足を動かしたりしている方がいらっしゃいました。
元気な100歳以上の方の3割はデジタル機器の使用経験あり
通信機器やパソコンの使用状況を尋ねたところ、過去使用したことがある方も合わせると、3割の方に使用経験がありました。現時点の使用状況は5人に1人で、その多くは電話などで話すこと、次にテレビ電話などで、中にはご自身で動画を撮影し、それを視聴されている方もいらっしゃいました。使用時の相手先は子どもや孫、ひ孫、親族となっており、コロナ禍で交流が途絶えがちな中、デジタル機器も積極的に活用し、交流している様子がうかがえます。
元気な100歳はコロナ禍だからこそ新しいことを始めている!?
コロナ禍だからこそ始めたことや取り組んでいることがあるかを聞いたところ、76%の方があると回答されました。手洗い、うがい、消毒などの感染予防対策が圧倒的に多い結果となりました。室内を歩いたり、健康増進機器を使用し運動を始めたり、絵手紙や書道、手芸、脳ドリルやクロスワードなど新たな趣味を持つようになった方もいらっしゃいました。
▷コロナ終息後の楽しみは?
コロナ終息後にやりたい・楽しみにしていることを聞いたところ、多かったのは子どもや孫・ひ孫、友人などと直接会いたいという「周りとの交流」でした。
皆と美味しいものを食べたいという意見や、温泉や旅行、散歩を含む「外出」希望が多い結果となりました。「お花見に行きたい」という声や、中にはコロナ禍前は、趣味のカラオケや民謡に外出していたが、今は自宅でCDを繰り返し聞いているという意見もありました。コロナ禍がきっかけで、「今までできなかったことができるようになった!」など、コロナ禍に負けずに生活されているということがわかります。
健康長寿に関連するのは睡眠の量よりも質(監修医師コメントより)
高齢化社会となり、特に健康寿命の延伸は大切です。人生の3分の1は睡眠時間といわれるくらい、睡眠についての重要性が指摘されています。一方で、睡眠時間は長ければ良いということではなく、ある研究では、睡眠時間は10歳までは8~9時間、15歳で約8時間、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間と、「加齢と共に必要な睡眠時間が少なくなる」と報告されています。高齢者は若い頃に比べ早寝早起きになるようです。これは体内時計の加齢変化によるもので、睡眠だけでなく、血圧・体温・ホルモン分泌など、睡眠を支える多くの生体機能リズムが前倒しになります。
今回の調査では、睡眠時間9時間以上が85%であり、「予想外に」睡眠時間が長い結果でした。ただし、73%という高い割合の方が睡眠に満足しているという結果を考慮すると、健康長寿に関連するのは睡眠の量よりも質なのかもしれません。
「規則正しい食生活」、「日中を活動的に過ごす」、「適度な運動習慣を持つ」ことは、決まった時間に入眠・起床することを促し、また良い睡眠につながります。良い睡眠を得ると、日中を活動的に過ごすことができ、メリハリのある生活を送れるようになります。ウォーキングをしたり、散歩を楽しむことは質の高い睡眠につながるでしょう。外出が難しい場合、自分でできる範囲の家事をするだけでも身体活動は保たれると思います。入眠困難や中途覚醒などの睡眠障害がある場合は、生活に支障がない範囲でサプリメントや睡眠導入剤を活用することも良いと思います。
年を取っても好奇心を持ち、いろんなことに挑戦することも健康長寿のコツです。デジタル機器を用いてオンラインで交流を深めているという実態はとても好ましいものだと考えます。コロナ禍であっても終息後を見据え、周囲との交流を前向きに捉えられている様子も私自身が気持ちの有り様として見習いたいと思いました。
<吉村芳弘(よしむらよしひろ)先生プロフィール>
日本サルコペニア・フレイル学会理事。熊本リハビリテーション病院サルコペニア・低栄養研究センター長。専門分野はリハビリテーション医学と臨床栄養学。外科医師の経歴から術後のリハビリテーションの重要性を痛感し、現在はリハビリテーションと栄養管理に並行して取り組む「リハビリテーション栄養」という視点から、積極的に臨床研究や講演を行っている。
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監修医師のコメントにもあるように、睡眠そして、体を動かすこと、そして新しいことへのチャレンジ精神旺盛であることが、健康寿命に大きく関わっていることがわかりました。今からでも取り入れ、健康寿命を延ばしていきましょう。
調査概要
・調査時期:2021年5月27日(木)~ 7月5日(月)
・調査地域:全国
・調査方法:100歳以上の方ご本人に対するヒアリング、ご家族に対する質問用紙による自記入式調査
・調査主体:キューサイ株式会社「100歳まで楽しく歩こうプロジェクト」
・調査実施:株式会社クロス・マーケティング
・抽出方法:調査実施機関のリクルートネットワークを用いた機縁法リクルート
・調査対象:100歳以上の男女100名、100歳以上の方のご家族・近親者(寝たきり生活者と病院入院者は対象から除外して実施)