取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、大阪府内で両親との三人暮らしをしている陽子さん(仮名・39歳)。大阪府出身で、両親と4歳上に姉のいる4人家族。父親は機嫌が良いときと悪いときが別人のように違い、不機嫌にならないようにずっといい娘を演じてきたと振り返ります。そんな父親の存在が外にバレるのが恥ずかしいと思うようになったとか。
「友人の誰にも、たとえ話としても父の話題を出すことができませんでした。だって親族間で集まったときにすでに父親は恥ずかしい存在だったから。親族の集まりでは不機嫌になることは少なかったけれど自分のことばかりを話していて、自分が中心にいないとわかると黙って伯父さんが話かけてきてくれても無視をするような人です。わがままな子どもがそのまま大きくなった感じですね。私は付き合っている男性とどれだけ深い仲になったとしても父親に紹介しようなんて一度も思えませんでした」
恥ずかしい父親を紹介したくなかった
就職先で出会った男性と結婚話が出たのは陽子さんが23歳のとき。まったく結婚を意識していなかったこともあり、嬉しいという感情よりも戸惑いのほうが大きかったと言います。
「相手は4つ上で付き合って3年といえば妥当かもしれませんが、私は結婚なんて30歳前後でできればいいなってぼんやり思っていただけでした。それに、結婚となるとどうしても家族に紹介したり、自分たちだけのことじゃなくなる。父を相手に見せて引かれるのが怖かった」
半年間は結婚の具体的な話を進めずにいたものの逃げ切れずに父親のことを伝えて、受け入れてもらえたそう。そこから1年強に及ぶ説得が行われます。
「父親の反対を無視して結婚するつもりだったんですけど、相手が父親にわかってもらおうと言ってくれて。優しさだけはある人だったんですよ(苦笑)。
父親は最初はどちらともわからない態度だったんですが、交際期間が3年であることがわかると『一度も挨拶に来なかったやつが』と怒り狂いましたね。私なら初対面でそんな姿を見たらひるむのに、相手はその後は、私と会う予定のときは実家まで電話をかけて伝えたり、定期的に父を食事に誘ったり。本当に優しさだけはある人だったな(苦笑)。
やっと結婚を認めてくれたのは初めて会ってから1年2か月後でした。そんなに苦労したのに、それと同じくらいの長さで結婚生活は終わったんですけどね。理由は相手の浮気です。私はやり直すつもりだったんですけど、相手が別れたいと言ってきたから……」
【定年から被害妄想の矛先は母親一点に。次ページに続きます】