取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「私は母子家庭で育ったのですが、定期的に父の存在には触れていました。2人が仲が良かった頃は、そんな複雑な家族関係ながらうまくいっていたのですが……」と語るのは、久美子さん(仮名・41歳)。彼女は今年に入って結婚をしたと言います。
父と母は不倫関係の延長で私を産んだ
久美子さんは埼玉県出身で、母親との2人家族。基本は2人で生活していたと言いますが、父親は週に1~2回は家に来て、一緒に過ごしていたと振り返ります。
「覚えていないんですが、私はその週に1~2回来るおじさんのことをお父さんだと認識はしていました。その理由は母親がそう話したからか、父が私のことをわが子のように接していたからかはわかりませんが、それが普通のことだと受け入れていましたね。会えて嬉しいとか、鬱陶しいとかの感情もよく覚えていないので何とも思っていなかったんじゃないかな。学校でも父のことが話題になった記憶がありません」
しかし、父親が来ると嬉しそうにする母親の顔はよく覚えているとのこと。
「両親は仲が良かったです。母親は父が来るといつも嬉しそうにしていました。中学生のときに祖母からの暴露をきっかけに、母親から未婚の理由を聞いて、父には別の家庭があって、母親は愛人という立場だということを知りました。父は未婚ながら自分の子を産んだ母親のことを大切にしているようで、よく私の前でイチャイチャしていましたね。母親も今思うと、女でした。父は私に対しても優しかったんですが、母親をとられるという複雑な気持ちもあって、結果、嬉しいとも鬱陶しいという感情も抱かなかったと思います。
私の家は祖父母の援助も借りずに貧乏じゃなかったのは、父のお金があったから。母親もフルタイムで働いていましたが、不自由なく大学まで行かせてもらえたのは父のおかげです」
【女性になっていく娘を母親は否定し続けた。次ページに続きます】