「終活」という言葉、いろいろなメディアで聞くようになりました。しかし、具体的に何から始めたらいいのかはわからない方が多いのでは? 「自分はまだまだ」と思う方や、「親は何か準備しているのか」と気になった方もおられるかもしれませんね。元気なうちから始めておくことで、ご自身はもちろん、ご家族の安心に繋がるのではないでしょうか。
そこで、アクティブシニアのライフサポートを行う株式会社ユメコム代表の橋本珠美が、終活に向けて今からできる生前整理等を、豊富な経験や事例をもとにアドバイスを申し上げます。
目次
終活とは
終活、生前整理はいつから?
終活、生前整理の始め方
おひとりさまの終活
まとめ
終活とは
終活という言葉の意味は、「人生の終わりのための活動」を略した言葉です。「死」と向き合い、残された人生を自分らしくどう過ごすのか、自分自身の気持ちを整理するとともに、残された家族が困らないように準備をしておくこと。いつから始めるのか、何を準備するのかは、人によって様々です。
終活、生前整理はいつから?
いずれくる人生の終わりに備え、早い段階で何かできることはあるのか。生前整理の目的とポイントを2つの立場から考え、事例を見ながら紹介していきましょう。
子ども世代が今から出来ること
高齢になった親のために、子ども世代が出来ること。親のために実家を整理整頓したい「娘・息子世代の場合」の事例をご紹介します。
【悩みどころ】ものが溢れた実家で親がつまずいて怪我をしないか心配
帰省した際、物にあふれた実家を何とかしたいと思っています。懐かしいけれど、すでに使わなくなった品々が
溢れています。親だけでは片づかない、物につまずいて転んで怪我をしないかなど、心配はつきません。要るもの
要らないものに対する価値観を押し付けず、上手に進めるためにはどうすればよいですか。
【目的とポイント】家族の交流の場所をつくる
まずは、親と片づけのゴールを共有することから始めましょう。「散らかっているから」「危ないから」などと
一方的に伝えてしまうと、家族であってもトラブルになる可能性もあります。
例えば「孫が遊べる場所をつくる」とか「家族の思い出を整理する」という共通の目的をつくってみましょう。大事なのは、親が気持ちよく暮らしていけるかどうかです。ですから、捨てたくないという親の気持ちは大切にしてあげましょう。大切なのは親子のコミュニケーションです。
▷オススメは写真の整理から
昔の家族の記憶はもちろん、自分たちが知らない親の人生を一緒に振り返ることができるチャンスです。
▷実家の片づけNGワード
・どうせ使わないんでしょ。
・いつか使うっていつ使うの。
・どうしていつまでも取っておくの。
・結局困るのは私たちなんだから。
・要らないものが多すぎ。
・昔は片づいていたじゃない。
シニア世代が今から出来ること
高齢になった時に困らないよう、自分自身の今後のために備えて。老後のために整理整頓したい「シニア世代の場合」の事例をご紹介します。
【悩みどころ】家の中でも動くことが面倒になり、決まった場所に居ることが多くなった
年を重ねるとすぐに動くということが面倒になり、ついつい動かなくてもいい場所に必要なものを置いてしまいがちです。そのため、部屋にはどんどんものが溢れ、不用品に気づかなかったり、同じようなものがあちこちに散乱しています。どこから手をつけたらいいのかわからず、楽に片づけるにはどうすればよいでしょう?
【目的とポイント】セカンドステージのための生前整理
生前整理は後ろ向きなものではなく、すっきりとさせることで心が前向きになり、これからの人生をより楽しく過ごすという目的があります。特に、思い出のものは「手放せない」と悩む方も多いのですが、手放すことだけを考えず、家中にある思い出のものを集め、「思い出箱」を作ることから始めてみましょう。
■後悔のない片づけをするための「魔法の整理の4分類」
元気なうちに、生前整理を始めることをおすすめします。「いる」「いらない」だけで判断せず、4分類を活用してみましょう。
▷いる
今その場所で使っているものと、将来的に使うもの。思い出のものでも、今使っているなら「いる」へ。
▷いらない
今使っていないもの、使う目的が明らかでないもの。思い出のものでも手放せるものは「いらない」に。
▷移動
その場所で使っていないものは、「移動」に分類。思い出のものとして残すと決めたら一か所にまとめます。
▷迷い
いるか、いらないか8秒迷ったらここへ。半年後の期限を書き出して下さい。時間が解決してくれます。
終活、生前整理の始め方
終活において欠かせない「生前整理」。いつ、何のために、どんなことをすべきなのか。自分でできる「生前整理」の方法をお伝えします。
生前整理
人生の節目となるタイミングにおいて、身の回りを整理し、不要なものを処分して必要なものだけを残しておくことは、遺された家族や親族に迷惑をかけないことに繋がります。家の中には思っている以上に不用品があるものです。そのため、早いタイミングで始めることをおすすめします。
書類
通帳、保険証、保険証券、年金手帳、公共料金関連書類、などは死後の早い段階で手続きが必要なため、整理し、ノートに書き留め、1か所にまとめておくとよいでしょう。書き留めたノートの置き場所は、信頼できる子どもなどに伝えておくのもひとつです。このとき、既に期限の切れた契約書類等や、現在は自宅にない電化製品などの保証書(取扱説明書)は廃棄しましょう。
財産
株券や債券、不動産の登記簿など、財産となるものはまとめ、ノートに書き留めておくとよいでしょう。株券等は証券会社から運用報告書等が送られてきますので、ファイリングするなど工夫しましょう。使っていないクレジットカードは、解約しておくとよいでしょう。
借金
ローンを組んでいる場合、契約書等をファイリングしておきましょう。マイナスの遺産は相続時にトラブルになりやすいので、明確にし、遺族にわかりやすいようにしておくことが大切です。
形見分け
大切にしている品物、貴金属や衣類、骨董品など形見分けしたいものを選別し、クリーニングや修理を行い、それらの品物を誰に形見分けしたいかリスト化しておきましょう。あまりに高い品物は贈与税の対象になることもあるため、注意が必要です。
SNS
ブログやツイッター、フェイスブックなどのアカウントを持っている場合は、ID とパスワードをメモしておきましょう。
パソコン
スマートフォンやパソコンに入っている写真や動画などのデータやメールなどは、DVD に残すなど整理しておきましょう。また、誰にも見られたくないデータがある場合には、早めに処分することをお勧めします。また、ネットの手続きにより購入等をしている場合は、購入先のID やパスワードなどもメモしておけば、死後に親族が解約手続きをするのに便利でしょう。
不用品の処分
「いつか使うかも」「いつか着るかも」と、ずっと片づけたままのものはありませんか。ここ数年使わなかったものは、思い切って処分しましょう。前述の「魔法の整理の4分類」を活用してみてください。また、ネットオークションやリサイクルショップ、買取業者などを利用するのもおすすめです。
エンディングノート
「伝えておきたい」大切なことは、エンディングノートなどに残し、家族と共有しておくとよいでしょう。エンディングノートは、いずれ訪れる死に備え、自身の希望などを書き留めることが目的です。しかし、最近では、認知症や突然の事故などに備え、意思表示ができなくなった時に希望を書き込んでおくためにも使われています。
おひとりさまの終活
高齢おひとりさまとは、下記のような方をいいます。
・配偶者は先立ち
・子はいない
・兄弟姉妹はいるが皆高齢
おひとりさまの終活は、早い段階から、老後の生活に寄り添ってくれる専門家(後見人・身元保証・死後手続き代行などができる司法書士等)を頼っておくといいでしょう。生前かつ元気なうちに、契約しておくことが大切です。
まとめ
親子それぞれの立場で、今できる「終活」のための生前整理やその具体的な方法をお伝えしてきました。「親が亡くなった後の手続きが大変」、そんな声を聞く機会もあるかと思います。遺された家族の負担を少しでも軽くするためにも、今出来る小さなことから始めてみてはいかがでしょうか。
●構成・編集/ 内藤 知夏 (京都メディアライン・http://kyotomedialine.com)
●取材協力/橋本 珠美(はしもと たまみ)
2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。
株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)