文/印南敦史

新型コロナの影響で、旅をする機会がめっきり減ってしまった。リタイア後は夫婦でゆっくり旅をするつもりだったのに……と、悔しく思っている方もいらっしゃるのではないだろうか?

旅行作家である『ご近所 半日旅 ‐ いちばん気軽な「新しい旅」のスタイル』(吉田友和 著、ワニブックスPLUS新書)の著者も、旅ができない状態が続いているという。

だが、しかし――。
実は悲観していないのだ。ストレスもたまっていない。
なぜなら、新しい旅を始めたから。
世の中の変化を踏まえたうえで、現実的に可能な範囲でいかに楽しむかを自分なりに模索した。その結果いきついた解決策の一つ。
それが、「ご近所半日旅」である。
(本書「はじめに――近くて、短くても旅なのだ」より引用)

改めて注目してみたところ、家の近くにもおもしろそうな場所がたくさん存在することに気づいたのだという。

たしかにどんな街にも、豊かな自然に触れられる公園、知的好奇心を刺激してくれる史跡などはあるものだ。いつも素通りしていた店が、知る人ぞ知る名店だったということも考えられるだろう。

いずれにしても、ご近所であれば、ちょっとしたスキマ時間にブラリと足を運ぶことができる。したがって、午前中だけ、午後だけというような「半日旅」には最適なのだ。

ご近所半日旅には、2つのキーワードがあるそうだ。当然ながら、「ご近所」であり「半日旅」でもあるということ。いいかえれば、近場の短い旅だということになる。

ちなみに「半日旅」をテーマにした書籍をこれまでに4冊出版してきたという著者は、半日旅を次のように定義づけているという。

半日旅=思い立ってすぐに実行できる旅(本書14ページより引用)

旅行といえば、何ヶ月も前から計画を立て、交通手段や宿の予約を入れるのが普通だ。しかし半日旅では、そんな前準備が必要ないわけである。

「ご近所半日旅」とは、そんな「半日旅」の発展形。だがそうなると、どこまでをご近所とするのかが気になるところではある。人それぞれ距離感は違い、住んでいる地域によっても状況は変わってくるのだから。

そこで本書では、わかりやすさを優先する形で、ご近所を大きく2つに分けている。

(1)超ご近所(本書17ページより引用)

これは、自宅から徒歩あるいは自転車で訪問可能なエリア。著者の感覚では、「ご近所」ということばのイメージに最も近いのがこれにあたる。

友人・知人が住んでいて、普段から行き慣れたスーパーや商店街にアクセス可能な範囲。なお自転車といってもロードバイクなどで長距離移動するような感じではなく、ママチャリなどの一般的な自転車で、無理なく移動できる範囲。

(2)ややご近所(本書17ページより引用)

こちらは、自宅から電車やバスなどの公共交通機関で短距離移動したエリア。

電車の場合、各駅停車や準急、急行などの種別を意識する必要はなし。重要なのは、移動距離よりも移動時間だという。

著者が考える理想的な移動時間は1時間程度だそうだが、ご近所となると、最短で10〜15分程度と、もう少し短くてもいいようだ。というよりも厳密に考えず、各自が考える「超ご近所」「ややご近所」を基準にすればいいのである。なにしろ、楽しむのは自分自身なのだから。

しかし、ここでひとつの問題に直面することにもなるのではないか? 「ご近所半日旅」は、散歩とどこが違うのかということだ。

この疑問に対して著者は、「自分がどう感じるか」が大切なのだと主張している。自分自身がこれは「旅」なのだと確信するのであれば、それでいいのではないかと。

たとえば、ご近所をブラブラするだけなら「散歩」という言い方もできる。とくに「超ご近所」のほうは、行動内容はまさに散歩が主体だ。
しかし、それでも僕は「これは旅なのだ」と主張したい。たとえどんなに近いところだったとしても、見知らぬ場所へ行って好奇心を刺激され、ときには新しい発見を得られるような行為は「旅」なのだ。(本書19ページより)

私も先日、通い慣れた道を一本左に折れてみたら、居心地のよい公園(のような史跡のような不思議な場所)を見つけたことがある。だから、この考え方は理解できる。

なお著者は、強いて「散歩」と「ご近所散歩」の違いを具体化するなら、時間がひとつの目安になるかもしれないと記している。

散歩というと現実的なのは一〜二時間だと思う。たいしてご近所半日旅は、もう少し長いイメージである。少なくとも三時間以上。半日旅というぐらいなので、最大で半日。
(本書19ページより引用)

発想の違いだが、確かにそう考えると、「ご近所半日旅」は少しばかり贅沢な時間だと考えることもできそうだ。思うように移動できないこんな時期だからこそ、可能な範囲で楽しみたいものである。

『ご近所 半日旅 – いちばん気軽な「新しい旅」のスタイル』

ご近所半日旅の表紙
吉田友和 著
ワニブックスPLUS新書

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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