17世紀後半の有田において、主に輸出向け製品としてつくられた柿右衛門様式と呼ばれる大型で華麗な磁器は、ヨーロッパの王侯貴族に愛され、宮殿などに飾られました。
一方で、手のひらで愛玩される小さな作品を中心とした「カワイイ」柿右衛門もあります。関西在住のコレクターによる「Yumeuzurasコレクション」は、動物や子どもたちが表情豊かに描かれた小さな柿右衛門で構成されています。
Yumeuzurasコレクションから選りすぐりの作品を紹介する展覧会が開かれています。(7月25日まで)
本展の見どころを、大阪市立東洋陶磁美術館の学芸員、巖由季子さんにうかがいました。
「今回の展覧会では、コレクターが独自の視点で収集した、小さくかわいい作品を紹介しています。
<色絵 梅鶉文 輪花小皿>では、直径13cmの小さな皿に2羽の鶉(うずら)を描いています。見どころは、鶉たちの表情です。目の描き方などから少しずつ表情が異なり、写真左の青い鶉は目を細めてくちばしをあけ、笑っているようにも見えます。
<色絵 甕割図 八角皿>は、ある故事の一場面を描いた作品です。左側で片腕を振り上げているのは幼い日の司馬光(1019-1086)です。北宋の政治家、学者であった司馬光は、水甕の中に落ちてしまった子どもを助けるため、石を投げ大切な甕を割って命を救ったと伝えられています。甕は割られ水が流れていますが、溺れかけていた子どもは甕の中で泣いているような表情を浮かべています。線描による眉や目の表情から子どもの心情まで見てとれるような、柿右衛門様式ならではの繊細な筆致の上絵付です。
余白をたっぷりとって大輪の牡丹をはなやかに描いた鉢や、ユニークなかたちの水注、松竹梅文の八角鉢など、展示替えを行い多彩な作品を紹介しています。
展示作品54点すべてを掲載した展覧会図録は、ECサイトでもお求めいただけます。(https://mocosaka.thebase.in/items/39101566)
同時開催の特別展『黒田泰蔵』、コレクション展の作品とともにお楽しみください」
「カワイイ」柿右衛門がずらり!! 会場でじっくりご鑑賞ください。
【開催要項】
特集展「柿右衛門―Yumeuzurasセレクション」
会期:2020年11月21日(土)~2021年7月25日(日)
前期2020年11月21日~2021年3月28日 後期2021年3月30日~7月25日
会場:大阪市立東洋陶磁美術館
住所:大阪市北区中之島1-1-26
電話:06・6223・0055
開館時間:9時30分から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし5月3日は開館)、5月6日(木)
https://www.moco.or.jp
料金:HP参照
アクセス:HP参照
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため休館している場合があります。再開状況はホームページでご確認ください。
取材・文/池田充枝