関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
***
地元の街にスカウトが来るほど評判の美少女
今回の依頼者は中村佳恵さん(仮名・55歳)。現在19歳のお嬢様が、1週間以上音信不通になっていると、深夜に電話がかかってきました。
「娘と連絡が取れないんです。LINEの既読があったのは2日前なんですが、そこから既読にすらならない。本当にどうしましょう。山村さんが娘のアパートに行ってみてきていただけますか?」と電話口の向こうで慌てていることがわかります。
上京したての子供と連絡が取れなくなった、という相談は多いです。しかし、私たち探偵が行っても、該当の部屋の電気がついているか、消えているか程度の確認になってしまいますし、居留守を使われる可能性の方が高いです。事件に巻き込まれていると感じるなら、警察に相談する方がいいとお伝えしました。
すると、「それにはちょっと事情がありまして。明日、朝一番の便で東京に行きますので、会ってください」とおっしゃいました。佳恵さんは九州のある地方に住んでいるとのこと。
佳恵さんが指定したのは、羽田空港から近いレストランの個室でした。しばらく待っていると、マーブル柄のワンピースにハイブランドのバッグ、色付きサングラスをかけた、小柄でふくよかなとても目立つ女性がお見えになりました。
「はじめまして、連載を読んでおり、秘密裏にさまざまなことを解決していただきたくて、今日はお願いしたのです」とおっしゃいました。聞けば、親族や相続がらみの複雑な事情があり、お嬢さんと連絡がつかないことを、自力でカタをつけたいとおっしゃっていました。
お嬢さんの写真を拝見すると、びっくりするくらいの美少女です。色が白く目がパッチリとしていて顔立ちが整っている。ロングヘアで色白、ほっそりとしておりハイブランドのサーモンピンクのワンピースが似合います。
「娘は、小学校の頃から芸能事務所のスカウトが来て、中学・高校では学校の先生までストーカーになってしまうくらいでした。本人は、幼いころから告白されたり意地悪されたりして男性全般が苦手です。女性からは仲間外れにされたことも多く、あまり人を信じないところがあります」
【自分を変えるために東京に出たかった……。次ページに続きます】