車﨑智也さん(47歳)
群馬・館林で代々続く農家に生まれるが、食べ物好きが高じて調理師学校へ。卒業後は『銀座天一』で5年修業。2014年8月に実家の敷地内に店を開いた。

【群馬 館林】天ぷら車

一面に田んぼが広がる、群馬・館林ののどかな田園風景の中、突如と現れるのが『天ぷら車』だ。意外なロケーションにまずは驚くが、実は天ぷら好きたちがこぞって訪れるという気鋭の一軒だ。

「薄力粉はマイナス60度の高性能冷凍庫で芯まで冷やし、やはりキンキンに冷やした卵水をボウルに注ぎ、粉を加えたらホイッパーで一気に泡立てます」

店主の車﨑智也さんは、カンカンカンカン、と金属音を鳴り響かせながらホイッパーを素早く動かし、きめ細かな気泡をたっぷり孕んだふわふわの生地を鉢に注ぐ。

「揚げると、この気泡が押し出されて細かなツノが立った衣になり、シュワシュワと溶けるようなニュアンスが出ます。うちでは、コースは衣の状態を見て、天種の順番を変えて供しています」

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ホイッパーで空気をたっぷり孕ませた、天ぷら新時代の衣。地元の直売所の卵と石臼挽きの国産小麦粉を使用。

天ぷらの革命児からの助言

老舗『銀座天一』で伝統的な江戸前の修業を積んだ車﨑さんが、こうした革新の衣へ舵を切ったのは、鬼才といわれる同門の料理人の影響がある。感動を覚えるほどの天ぷらの衣とその技術を目の当たりにし、このままではダメだと思うに至った。以来、多くの職人が憧れるカリスマ本人から直接アドバイスを受けながら、自分の天ぷらを進化させてきた。

「日本の四季折々の味を楽しむのに、天ぷらはとても理に適っていると思うんです。揚げるだけというミニマルな調理法の中で、どういう香りの出し方をするのか、どう食感を残すのか、逆に火を入れすぎずレアで出すのか。天ぷらは油っこいという概念を変えていきたいと思っています」

田んぼの真ん中から天ぷら新時代の幕は上がる。

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そら豆
近くの伊勢崎の農家直送。鮮度のよい豆の香りが飛ばないように、繊細に火を入れる。油のコクをまとった身がほくほくの美味。野菜は群馬の農家直送か、近隣の直売所で仕入れたものが多い。冬は下仁田ねぎも登場。
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穴子
店のスペシャリテ。きれいな海水で保管された穴子を直前に割き、作りたての衣と新しい油で2分揚げる。皮目のゼラチン質には香りと旨みがあり、臭みは一切ない。穴子のツメとわさびが添えられる。
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筍は鹿児島や大阪などから、収穫したらアクが出ないようにすぐにキンキンに冷やして送ってもらう。
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こごみ
軽いぬめりが持ち味のこごみ。たらの芽やふきのとうなど山菜はできるだけ地物の天然を使う。
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天丼
かき揚げは旬替わりで、春は桜海老とアオリイカ。12年注ぎ足している丼つゆは喜界島のきび砂糖でコクを出す。
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天ぷら車

住所:群馬県館林市野辺町703 
電話:0276・51・5135 
営業時間:11時30分〜14時(最終入店13時)、17時30分〜22時(最終入店20時) 
定休日:水曜、木曜の昼 
交通アクセス:JR館林駅より約7㎞
◎おまかせコース1万5000円〜、予約制。

取材・文/渡辺菜々緒 撮影/鈴木泰介

※『サライ』2026年5月号より

5月号の大特集は『天下人の城』

 

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