りゅうてい・こちらく 1988年、東京生まれ。2005年、16歳で落語家の道に入り、2019年真打昇進。浅草演芸ホールの舞台袖にて。他の演者のネタに対する客の反応をうかがう。

演芸界のニューリーダーとの呼び声もある。37歳にして芸歴は20年超。かつて二ツ目の若手11人で組んだ人気ユニット「成金」の中心的存在で、真打昇進はいちばん乗りだった。

「高校を中退して16歳で入門しましたから、仲間内で芸歴は上だけど歳はいちばん下。引っ張るというより引き上げてもらったんです。『湯屋番』のオチも、成金の(瀧川)鯉八さんの助言を受けて良くなりました。前座さんの言うことだって取り入れますよ。私の場合、リーダーというより、これまでしたことがないしくじりがないってぐらいのもんで。師匠方に口幅ったいと叱られ続けましたから」

17回破門宣告をされ、前座時代に3度も師匠が替わっている。

「しくじるたびに頭を丸めたんですが、丸めた翌日にまたしくじった。そしたら文治(ぶんじ)師匠(十一代目桂文治)が“もう切る毛がねえじゃねェか”って。思わず笑ってしまってまた叱られるという……。よく前座さんから“小痴楽師匠、この失敗はどう挽回したらいいですか”と訊かれます。みんな俺がぜんぶ経験済みだと思ってやがるからね」

昭和の香りがする芸人

軽快なテンポで噺が進む。この日の着物は東京・銀座の街路樹の柳を染料にした逸品。

佐藤友美さん、杉江松恋さん、橘蓮二さんは、「昭和の香りがする、芸人らしい芸人」と口を揃える。着物も所作もいなせ。見た目は爽やかだが悪童っぽさがあり、面倒見がいい。

「悪く言えば世の中をなめているのかもしれませんね。でも窮屈な人生は面白くないですから。一度、寄席から寄り道せずに自宅に真っ直ぐ帰るってのを続けてみたら、ストレスで体がおかしくなってしまって。親父の影響もあるかもしれません」

小痴楽さんは五代目柳亭痴楽の次男として生まれた。

「親父は、寝間着姿で“タバコ買いに行ってくる”と家を出て、2週間帰ってこなかったですからね。芸人はこうあるべき、と背中を追っているわけじゃないけれど、実に楽しそうに生きていた。着道楽も親父譲りかもしれません」

入門は早いが、15歳まで落語を聴いたことはなかった。寄席に行った経験もない。ところが、ふとCDで聴いた途端にどっぷりはまり、16歳で果敢に飛び込んでいく。その無鉄砲さは、落語の世界の住人のようでもある。

「『湯屋番』のどうしようもない若旦那や『大工調べ』の家賃滞納している与太郎が好きなんです。彼らの生き方が羨ましいのかもしれませんね」

明治時代の地図をあしらった襦袢。見えないところにも、お洒落が行き届いている。

この演目を聴きたい

湯屋番

ろくでなしの若旦那が、銭湯の番台に座ってあらぬ妄想を繰り広げる。「女湯を覗きたい」とスケベ心丸出しだが、小痴楽さんの若旦那は、嫌らしさよりおかしみが勝る。

「おい、番台見てみろよ。
変なやつが上がっているよ。
てめぇの手をてめぇで引っ張って
『おあがりぃ、おあがりぃ』って言ってんだよ。
面白ぇから、みなで並んで見物しようぜ」

「令和の名人」推薦者(特集内の評論を担当)

佐藤友美さん(演芸専門誌『東京かわら版』編集人)
幼少期から伝統芸能に親しみ、『東京かわら版』編集部へ。寄席演芸の普及に尽力。4月に『東西寄席演芸名鑑3』を刊行予定。

杉江松恋さん(作家・文芸評論家・演芸プロデューサー)
推理小説の書評や小説執筆のかたわら、落語会や浪曲会を主宰。夢枕獏『陰陽師』を天中軒すみれさんのために脚本化。著書多数。

橘 蓮二さん(演芸写真家・演芸プロデューサー)
落語、講談、浪曲を中心に漫才、神楽など演芸全般の舞台や楽屋、ポートレートを撮り続ける。落語会のプロデュース、著書多数。

取材・文/角山祥道 撮影/塚田史香

※『サライ』2026年4月号より

4月号大特集はサライ「演芸」令和の名人です

 

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