
大阪府出身。18歳から大阪や神戸の日本料理店で料理人として研鑽を積み、15年間料理長を任される。独自の研究を重ね、2022年8月『天ぷら 桜人』をオープン。
【兵庫 芦屋】天ぷら 桜人
関西は江戸前のような天ぷら専門店は少ないが、和食や会席の一品として親しむ文化がある。だからこそ、一品一品を丁寧に揚げ、天ぷらという料理の奥深さをコースで伝える一軒は貴重な存在だ。
芦屋に暖簾を掲げる『天ぷら 桜人』は、開店して3年半ながら独自の視点と確かな仕事の積み重ねで、天ぷらの真価を探る店。店主の吉田直人さんは、他店が手がけていない工夫を重ね、こう語る。
「こだわっているのは、火入れの温度と時間。薄衣で限界まで油を抜いて、サクサクした天ぷらを目指しています」
和食の世界で20年間研鑽を積み、天ぷらはほぼ独学。料理人として培った経験を生かし、揚げ物の対極ともいえる軽さを追求している。
衣と火入れの絶妙な設計
コースは天ぷら11種類ほどに料理5品、土鍋ご飯で構成される。衣は水分量を通常の倍近くまで増やし、細かな気泡を含ませて軽やかに仕立て、薄くまとわせる。これを太白胡麻油で揚げ、最後に温度を上げて油気の抜けを促し、さらにペーパーで吸油する。
素材にも工夫を凝らす。最初に出す車海老は3〜4日間熟成させ、ミディアムとレアの2種類の火入れで海老の旨みに迫る。魚介は近海ものを中心に揃え、タコは明石、ホタルイカは浜坂漁港から仕入れ、野菜も作り手や品種に目を配る。ときには創作天ぷらもあって、海苔の天ぷらには生ウニとイカをのせ、手渡しする趣向が楽しい。

技術のすべてが表れるという車海老から始まる。1本目のミディアムが1分半、2本目のレアは30秒火入れ。天ぷら台は市野雅彦作。

多くの店が使うイカとの差別化を図り、タコを定番に。2時間半〜3時間かけて煮含めるため、揚げても柔らか。実山椒を添えて。

特有の生臭みを抑えるため、出汁で2度洗ってから揚げる。出始めは兵庫県浜坂漁港産、最盛期は富山湾産。葉皿は辻村唯作。

無農薬栽培された石川県産「魂のれんこん」と、濃厚で歯ざわりの良い徳島県産「赤蓮根」。種類が揃う時期には食べ比べで供する。

「何度来ていただいても喜んでもらえるように、いつも改良を試みています。器や店のしつらえも、もっと良くしていきたいですね」
味づくりにも、店づくりにも余念がない。


天ぷら 桜人
住所:兵庫県芦屋市茶屋之町10-9 アルブルクール2階
電話:0797・90・2731(予約はOMAKASEサイトより)
営業時間:18時〜の一斉スタート 日によって夜2回、昼営業あり
定休日:水曜、月2回不定休あり
交通アクセス:阪神電鉄芦屋駅より徒歩約5分
◎コース2万5000円、要予約。
取材・文/西村晶子 撮影/伊藤 信
※『サライ』2026年5月号より












