時が止まったかのような信州・木曽路の宿場町!妻籠宿と木曽福島宿を訪ねる

寺下の町並み。

昔の宿場の名頃を色濃く残す、妻籠宿・寺下の町並み。

「感じる旅 長野」のキャッチフレーズで観光推進を展開する長野県。上田と木曽、二つのエリアで、体験することで見えてくる新たな長野の魅力を3回にわたりご報告します。

第3回は、長野県の南西部、豊かな森林と木曽川沿いの街道で栄えた木曽路を、地元のガイドの方の案内のもと、歩きます。妻籠宿と木曽福島宿の二つの宿場町を訪ね、そば切り体験と「とうじそば」、さらに五平餅を堪能。郷土色溢れるエリアを探訪します。

■町並み保存発祥の地・妻籠

妻籠宿は室町時代、木曽義仲の子孫である義昌が木曽谷の南の備えとして整備した山城・妻籠城の麓に形成されました。

江戸時代には、五街道のひとつ中山道の街道整備とともに木曽11 宿といわれる宿場が発達。そのひとつである妻籠宿は、規模は南北約250mと11宿のなかで最小ながら、旅籠は31軒、人口は400 人を超えたといいます。

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妻籠の町並み。

妻籠の町並み。

昭和40年代、経済成長に伴い全国の伝統的な町並みが姿を消してゆくなか、いち早く町並み保存が始められ、昭和51年(1976)に国の重要伝統的建造物群保存地区の最初の選定地のひとつに選ばれました。

妻籠宿のなかでも寺下の町並みは、保存運動が最初に行われた地区。家並みは素朴で繊細、昔の旅籠そのままに出梁(だしばり)造りや竪繁格子(たてしげごうし)の家々が並びます。

庶民の木賃宿として使われていた「上嵯峨屋」などが復元されています。

ほかにも本陣、脇本陣奥谷が復元され、貴重な資料が展示。ちなみに本陣は、代々島崎家が当主を務め、最後の当主は文豪・島崎藤村の実兄でした。

本陣内部。

本陣内部。

町並みは中部電力により無電柱化されてすっきり。そしてなによりも妻籠の魅力はそこに人が住み、生活しながらその風情が守られているところです。

土産物店や茶屋などもありますが、あくまでもさりげなく、穏やかな暮らしの時間が流れていると、実感します。

花も飾られ、暮らしの時間が流れる。

花も飾られ、暮らしの時間が流れる。

四季の彩りも豊かで、取材時には「すっとこ」づくりという柿を包み熟成させる作業のさなかでした。

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すっとこづくり。

すっとこづくり。

妻籠の町歩きの際には、ぜひ地元の妻籠を愛する会のガイドの方に案内をお願いすることをおすすめします。町並みの魅力が2倍にも3倍にもなること間違いありません。

■入鉄砲・出女を取り締まる福島関所

中山道・木曽11宿のほぼ中間に位置するのが福島宿です。宿場の北入口には、箱根・新居・碓氷とともに天下の四大関所のひとつに数えられる福島関所があったことで知られています。

福島関所資料館。

福島関所資料館。

江戸と京都を結ぶ中山道の重要な関所で、入鉄砲と出女を厳重に取り締まり、往時の姿を復元した「福島関所資料館」で関所通行に関する資料が展示されています。

この資料館では、通行手形体験を楽しみました。毛筆で書かれた通行手形を役人に差し出し、しばし問答。さながら入国審査を受けているような心持ちに。この体験、今後プログラムとして取り入れていくそうです。

通行手形体験。

通行手形体験。

通行手形。

通行手形。

約280年間、代官として木曽谷を治めた「山村代官屋敷」へも。徳川家康の信任篤く、徳川直轄地支配を任された山村家の下屋敷の一部と庭園があります。

かつては豪壮を極めた屋敷だったとのこと。なかでも9代良由(たかよし)は上杉鷹山、細井平洲らの学者と交遊、木曽文学を築き、藤村の『夜明け前』にも名君として登場しています。

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村山代官屋敷。

村山代官屋敷。

木曽福島でぜひ訪ねていただきたいのが、上の段です。少し高台になっている地区に、崖にへばりつくように町家があり、古い宿場町の面影を残しています。

本陣を守るために造られた直角に曲がる街道や水場、家並みはなまこ壁や袖壁、千本格子などが見られます。古民家を利用した洒落た食事処もあり、落ち着いた雰囲気が漂います。

上の段の町並み。

上の段の町並み。

■信州ならではの味わい・とうじそば

御岳山山麓の開田高原は有数のそばの産地。そのお膝元で、そば切り体験と「とうじそば」を味わいます。

二八に打ったそばを、細く均一に切る。これの難しいこと。太さまちまちのそばを独特の食べ方で。とうじそばとは小盛りしたおそばをとうじかご(投じ籠)に入れ、季節の野菜やきのこたっぷりのつゆ(鍋)に浸し、さっと湯がいて食べます。

つゆもそばもアツアツで、寒い地方ならでは、信州伝統の食べ方だそうです。見た目はなんですが、自身で切ったそばはやはり美味しいものです。

そば切り体験。

そば切り体験。

このとうじそばに添えてあるのが、「すんき」と呼ばれる木曽地方に伝わる保存食。赤カブの葉を漬けて、発酵させたもの。近年の研究ではヨーグルトに匹敵するほどの乳酸菌があるという結果も発表されており、健康食品としても注目されています。

このすんきを鍋に入れていただくと、程よい酸味が加わり、さらに食欲をそそります。

すんきを鍋に入れて、とうじそば。

すんきを鍋に入れて、とうじそば。

もうひとつ、五平餅もご紹介。木曽では、間食として各家庭で親しまれてきたもので、うるち米を七分づきにして丸め、えごまのたれをつけます。程よい甘さのえごまのたれが、ほっと心を癒してくれる味覚です。

焼いた五平餅にえごまのたれをたっぷりと。

焼いた五平餅にえごまのたれをたっぷりと。

とうじそば体験や、関所通行体験などに関する体験ツアーの詳細はVISIT長野県「感じる旅長野」のサイトをご覧ください。

3回にわたりご紹介した長野の新しい魅力。長野県では、歴史文化、自然と健康、アウトドアをキーワードに様々な体験の旅を提案しています。体験することで理解が深まり、より楽しい旅の思い出作りができるものです。

ぜひ信州で、思い出に残る体験の旅を!

取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。