■1:五色沼の紅葉
裏磐梯(うらばんだい)は福島県北部にある磐梯山や吾妻山などに囲まれた標高約800mにある高原で、磐梯朝日国立公園に指定されています。明治21年(1888)の磐梯山の噴火によって高原や湿原、湖沼などが形成されました。
裏磐梯には数多くの湖沼があり、なかでも五色沼(ごしきぬま)と呼ばれる毘沙門(びしゃもん)沼や赤沼、瑠璃(るり)沼などの20~30の湖沼群が有名です。
五色沼は青色や青緑色、コバルト色など実に様々な水の色を呈しています。水質に硫酸イオンやカルシウムなどの成分を含むため、光の屈折の違いで神秘的な色が生まれるといいます。
五色沼は遊歩道で結ばれ、ゆっくり歩いても1時間ほど。春から夏にかけては新緑がまぶしく、秋はなんといっても錦(にしき)に染まる紅葉が魅力。例年10月中旬からが紅葉シーズンです。五色沼最大の毘沙門沼ではボート遊びなどができますので、のんびりと錦秋の一日を過ごすことができます。
■2:ドライブで満喫
裏磐梯の雄大な紅葉風景と湖沼群は、ドライブで楽しむのもおすすめです。裏磐梯高原と会津を繋ぐ「磐梯山ゴールドライン」では、磐梯山の爆裂火口の絶壁や静かな湖面を湛える猪苗代湖の景観が迫ります。
磐梯山の噴火で生まれた檜原湖や小野川湖、秋元湖などを眺め、林の中を走るのが「磐梯吾妻レークライン」です。途中にある中津川渓谷は裏磐梯随一の紅葉名所といわれ、多くのカメラマンが集います。
さらに土湯峠から福島市の高湯温泉方面へ、吾妻の山並みを縫うのが「磐梯吾妻スカイライン」。日本の道百選にも選ばれています。つばくろ谷や天狗の庭、双龍の辻など作家・井上靖氏が名付けた吾妻八景が次々と表われ、絶景の一語に尽きます。
上の写真は、「桧原(ひばら)ビューライン」と呼ばれる国道459号線の道の駅・裏磐梯からの眺めです。裏磐梯観光の拠点ともいえる檜原湖が美しく広がります。
■3:道の駅・裏磐梯名物
福島県北塩原村、「桧原(ひばら)ビューライン」と呼ばれる国道459号線沿いにある道の駅・裏磐梯。檜原湖(ひばらこ)を見下ろすロケーションに立ち、湖畔の風が爽やかに吹き抜けます。展望台からは、磐梯山の裏側の噴火口も見えます。
北塩原村では塩分濃度の濃い温泉が湧き、その温泉を煮詰めて古くから山塩が作られていました。江戸時代には会津藩の御用品となっていた、この塩を使ったラーメンや山塩ソフトなどがいただけます。
会津山塩ラーメンは、黄金色のスープ。あっさりしたなかにも、コクがあり、ミネラル豊富な山塩のまろやかな甘みもあります。スープが美味しく、飲み干してしまう人もいるとか。山塩ソフトは濃厚なミルクと上品な塩味が相まった絶妙な味です。
道の駅では裏磐梯の特産品も多数揃っています。特産の山塩をはじめ、新鮮野菜や山菜、茸、加工品など。一般に紅花いんげんといわれる「花嫁ささげ」は独特の豆です。標高800m以上の高地でしか栽培できないものだそうです。
■4:諸橋近代美術館
裏磐梯の自然散策のあとは、ぜひ芸術鑑賞をしたいものです。五色沼入口の近くに立つ「諸橋近代美術館」は、スポーツ用品を扱うゼビオの創立者・諸橋廷蔵氏の美術蒐集を展示しています。
諸橋氏はスペイン・フィゲラスにあるダリ美術館で、サルバドール・ダリの作品に出会い、惹かれ、蒐集を開始。東京で行われたダリ展の彫刻作品を譲り受け、念願のダリの作品約400点をメインにする美術館を開きました。
磐梯山を望む美しい庭園が広がる美術館外観は、まるで瀟洒(しょうしゃ)な中世ヨーロッパの邸宅のようです。
館内に一歩足を踏み入れると、スペインが生んだ奇才・ダリのシュルレアリスム(超現実主義)の世界に引き込まれます。曲り歪み弾ける彫刻や、原爆の惨状から想を得た「ビキニの3つのスフィンクス」などの絵画、最愛の妻・ガラをモデルにした作品などが輝きを放ちます。
ほかにもピカソやルノワール、シャガールなどの著名な作品が並び、私たちの目を楽しませてくれます。
■5:温泉いろいろ
裏磐梯には大自然に調和するホテルや旅館、民宿など宿泊施設も多く揃い、温泉も湧いています。
「大塩裏磐梯温泉」は特産の山塩がとれる塩分の濃い、高温の温泉。体の芯からよく温まる温泉です。「裏磐梯五色(ごしき)温泉」は神経痛や関節痛に効能が高い湯。「磐梯桧原(ひばら)湖畔温泉」は、ナトリウム‐炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉で、美肌効果があります。「猫魔温泉」は鉄分が多く含まれる赤茶色の湯。慢性消化器病などに効能があると言われています。
ほかにも温泉とプールなどを備える日帰り温泉施設「ラビスパ裏磐梯」などもあります。いずれの温泉も裏磐梯の豊かな自然がもたらした恵み。良質の湯ばかりです。
ハイキングやスポーツ、冬のスキーなどの疲労回復に効果抜群です。紅葉と秋の味覚を楽しみ、温泉でのんびり。秋の休日を存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。
※本記事は「まいにちサライ」2013年10月1日、10月8日、10月15日、10月22日、10月29日掲載分をまとめ、転載・加筆したものです。