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1999年までポルトガルに統治されていた中華人民共和国 マカオ特別行政区、マカオ。大型ホテルの多彩なショーや世界遺産の歴史地区など、マカオの様々な顔をお伝えしてきましたが、第5回となる最終回は、市民の生活が垣間見られるエネルギッシュな市場周辺と、マカオ観光のハイライト、聖ポール天主堂跡を案内します。

世界遺産の聖ポール天主堂跡。

世界遺産の聖ポール天主堂跡。


一日歩いても飽きない紅街市周辺へ 

世界中どこに行っても私が必ず訪れるのが市場。食材や日用雑貨など、その国独自の特徴や魅力がぎっしり詰まっていて飽きることがありません。

マカオの市場を調べてみると、松山市政公園の西側に、紅街市という2階建ての市場があるようです。朝9時すぎに市場に行くと、すでにたくさんの人でごった返しています。1階には野菜や果物が、2階には肉売り場があるのですが、屈強な市場のおじさんが豚一頭を背負ってのしのしと2階に上がっていく光景に遭遇しました。 

真っ赤な外観が目を引く紅街市。

真っ赤な外観が目を引く紅街市。

市場から続く義字街と呼ばれる通りに入ると、そこはまるで東京のアメ横。小さな商店が軒をつらね、狭い道の両脇に屋台がぎっしり並んでいます。

人の通りが多い市場周辺。朝から賑やか。

人の通りが多い市場周辺。朝から賑やか。

ケーキさんにベーカリー、饅頭を売っている店もあります。これからお昼だというのに、右を向いても左を向いても食べたいものばかり。 

ココナツを漉してスイーツを作るおばさん。できたてを店内でいただきたい。

ココナツを漉してスイーツを作るおばさん。できたてを店内でいただきたい。

「さあさあ、うちの美味しいお菓子をひとつどうだい?」と、屋台のおばさんたちから、試食の香ばしいクッキーなどを渡されると、これからランチだというのに、つい一袋、買ってしまいます。 

電話や靴、鍋の蓋などを路上に並べて売るおじいさん。

電話や靴、鍋の蓋などを路上に並べて売るおじいさん。

 
路上で古い靴や黒電話、ちょっと曲がったドライバーなどの日用雑貨を並べて売っているおじいさんも。なかなか売れなくても、時々、友達らしき年配客が訪れては、おしゃべりに花が咲いています。商売というより、老後の趣味なのかもしれません。

「天の川」と書かれた店の看板。何を売っているのかは分からなかった。

「天の川」と書かれた店の看板。何を売っているのかは分からなかった。

 
しばらく歩いていくと、道のはじっこに、カラフルな小屋を見つけました。どこにも窓がないけれど、いったい何の建物なのだろう? と眺めていると、地元の人たちが、パカッと扉を開けては袋を放り込んでいきます。

これは、どうやらゴミ捨て場。赤・黄色・青・白の扉は、燃えるものや燃えないものを分けているのでしょうか。日本にもこんなおしゃれなゴミ捨て場があったら楽しそうですね。 

カラフルなマカオのゴミ・ステーション。

カラフルなマカオのゴミ・ステーション。

それにしても、市場の回りには一寸の隙もなくビルがびっしり並んでいて、空き地や緑がありません。

土地がないので、運動したり、走ったりする場所もなく、高層ビルに住んでいる人は階段をあまり使わないので、大人も子供も運動不足になりがちなのだそう。まれにビルの間に小さな公園を見つけるのですが、日本にある子供用のブランコやすべり台ではなく、大人サイズの健康器具ばかり。朝からたくさんの人が訪れ、運動器具を使って、せっせと体を動かしています。

健康器具を置いた小さな公園。順番待ちをする人も。

健康器具を置いた小さな公園。順番待ちをする人も。

 
“鳥カフェ”に集う人々

エネルギッシュな市場エリアを離れて、今も昔も必ず観光客が立ち寄るというマカオ観光のハイライト、聖ポール天主堂跡へ向かいます。

途中、公園のそばのカフェで、不思議な光景を見かけ足を止めました。集っているお客はおじさんばかりなのですが、カフェの軒先に木製の鳥かごが吊るされ、黄色や青のかわいい小鳥たちがピーチクと鳴いています。

カフェのオーナーが飼っているのかしら? と思ったら、向こうから鳥かごを持っておじさんがスタスタ歩いてきます。そして軒先にひょいっとかけて、話の輪に加わるではありませんか。そうえいば、昔、中国大陸を旅したとき、朝早くからお茶屋さんや公園に鳥かごを持って集まる人々を見たことがあるのを思いだしました。

「鳥に日光浴をさせるんだ」と話していたおじさんもいましたが、中国では自分の自慢の鳥を連れてカフェに集うのは優雅なこととされているそうです。お互いの鳥を褒め称えあい、鳥の鳴き声を聞く余裕のある生活。大陸らしいゆったりとした習慣ですが、日本のドックカフェに似た「鳥カフェ」でしょうか? 

鳥だけでなくワンちゃんも。なぜか椅子にきちんと座っています。

鳥だけでなくワンちゃんも。なぜか椅子にきちんと座っています。

“鳥カフェ”のおじさんたちに手を振り、次の名所へと向かいます。白いシンプルなモリソン礼拝堂が立つプロテスタント墓地には、かつての貿易商人たちが眠っているそうです。遠く故郷に思いを馳せながら、ここマカオで亡くなった人もいるのかもしれません。

プロテスタント墓地のなかに建てられたモリソン礼拝堂。

プロテスタント墓地のなかに建てられたモリソン礼拝堂。

変わった形のポスト。

変わった形のポスト。


いよいよマカオ観光のハイライトへ

礼拝堂からアンティークショップが並ぶ大三巴街を通り、その途中で色とりどりのアパートが並ぶ「恋愛巷」と呼ばれる通りに入ると、マカオ観光の人気スポット、聖ポール天主堂跡が道の先に見えてきました。

かわいらしい恋愛巷の通り。写真スポットとして人気がある。

かわいらしい恋愛巷の通り。写真スポットとして人気がある。

 

マカオには返還前に一度、香港からの日帰りで訪れたことがありますが、建物は修復され、道もきれいになり、昔のマカオの面影を探すのは難しいくらい変わっています。しかし、聖ポール天主堂跡だけは返還前と同じ堂々たる姿で出迎えてくれ、懐かしい気持ちになりました。

堂々たる聖ポール天主堂跡。

堂々たる聖ポール天主堂跡。

 
もともとは聖アントニオ教会の礼拝堂として建てられたこの天主堂、1582年に現在の場所に移されたものの、何度か火災に遭い、現在はファサード(正面の壁)と階段だけを残すのみとなっています。35年の月日をかけて建てられたそうですが、よーく見てみると日本との関係を暗示させる菊の彫刻が入っています。どうやら、日本で迫害されたキリシタンが、マカオに逃れてこの世界遺産である聖ポール天主堂に関わったのではないかといわれています。

日本とのつながりといえば、もうひとつ。この天主堂の設計者である宣教師、カルロ・スピノラさんは、天主堂を設計した後、織田信長の許可を得て1602年に来日し、天文学や数学を教えたそうです。京都に建てられた南蛮寺(キリスト教会)に天文台を設け、二代将軍・徳川秀忠なども訪れて夜空を楽しんだのだとか。

右端に横たわる骸骨も。細かく見ていくとおもしろい。

右端に横たわる骸骨も。細かく見ていくとおもしろい。

残念ながら、カルロ・スピノラさんはマカオに戻ることも、天主堂の完成を見ることなく、長崎で処刑されてしまったそうです。信長も亡くなり、時代が変わっても熱心に布教しすぎたせいでしょうか。立派なヒゲを生やしたカルロさんの顔は、天主堂の最上段の左面に彫られていますが、どこか悲しげに見えます。ぜひ双眼鏡で探してみてください。

 さて、5回にわたってマカオの新しいスポットや世界遺産を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? 治安も良く食べ物もおいしく、リゾート気分や歴史も楽しめるコンパクト・シティ、マカオ。香港から日帰り観光はちょっともったいない。「今回の旅はマカオだけ」と決めて、ゆっくり巡ってみてもいいかもしれません。

マカオ直行でも香港経由で気軽に行けます。

マカオ直行でも香港経由で気軽に行けます。

 

取材協力:マカオ観光局

 
取材・文/白石あづさ
旅ライター。地域紙の記者を経て、約3年間の世界旅行へ。帰国後フリーに。著書に旅先で遭遇した変なおじさんたちを取り上げた『世界のへんなおじさん』(小学館)。市場好きが高じて築地に引っ越し、うまい魚と酒三昧の日々を送っている。

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