テーマパーク化する被災地
実は記者が訪れた約一週間後、世界各地の有名メディアでも取り上げられた結構大きな事件が起こった。ある写真がインスタグラムに投稿され物議を醸したのだ。チェルノブイリと題した写真には野外に佇む女性が写っている。下着をつけた女性の後ろ姿だ。そして、彼女は放射線防護服を脱いでいる。ドラマ「チェルノブイリ」の作者もこれに反応し、観光客は場所をリスペクトすべきだと注意を促した。その後写真は削除されたが、チェルノブイリの大衆化を象徴する事件となった。
今回の事件はアウシュビッツの例とも比較された。人類の負の遺産を巡る観光はダーク・ツアーリズムなどと呼ばれるが、観光がもたらす負の側面もさらけ出したと言えよう。他人事ではない。福島第一原発の将来もこうなるのかと不安にさせられる事件であった。
話はごく一部の観光客だけに限らない。チェルノブイリは確実にテーマパーク化しているようだ。観光の要所は観光客が殺到しており、興ざめに感じた人も少なくない。いわゆるオーバー・ツーリズムも時間の問題かもしれない。観光客の一部には緊張感やモラルの欠如も見られる。ツアー会社が観光客への情報提供と教育面をしっかりケアする必要がありそうだ。
世界で最も危険な観光地?
さて、外務省の海外安全ホームページによると、チェルノブイリの危険レベルはなんと1である。ここは事実上「紛争地以外の地域」となるので、「比較的平穏で安定している」となっている。見方次第では最高レベルの4とも言えるチェルノブイリ。足を踏み入れるか入れないか。あなた次第だ。
●ツアーへの参加の仕方
チェルノブイリ・ツアーと言えばキエフから出発するのが一般的だ。登録手続きがあり、ツアーの人気も急上昇しているので、キエフ到着前にネットで予約することをすすめる。一か月前か、最低でも1週間前に予約するのが無難。一番人気は値段も手ごろな日帰り団体ツアー。ミニバンでのキエフ往復、英語かロシア語のガイド、昼食がつくのが一般的だ。さらに、チェルノブイリに宿泊する数日間のツアーや、プライベート・ツアーなどもあるが、ウクライナの物価に比べると非常に高価。
【お土産】
写真・文/ 千夏英二(ちなつ・えいじ)
欧州在住のフリーランス・ライター。海外書き人クラブ所属。モットーは「安全第一で裏道を探せ。でもお金はなるべく使わないで楽しめ」。この無理難題を解くのが趣味。