ウィーン最古の銀細工専門工房
最初に紹介するのは、1847年に創設された銀細工を専門とするウィーン最古の工房「ヤロシンスキー&ヴォーゴァン」です。
ウィーン7区(ウィーンは東京と同じく23区から成ります)の住宅街の中に、店舗と工房があります。6代目社長のヴォーゴァンさんによると、カトラリー(ナイフやフォークなど)をはじめ、テーブルウェアに関するあらゆる銀製品が揃うと言います。たしかに、ナイフやフォーク以外にも、アスパラガスを茹でる際に使う器具や、チキンの足を掴むための器具などもあり、ヨーロッパ文化の食に対するこだわりを垣間見ることができます。さらに銀には抗菌効果があることから、赤ちゃんのへその緒を切る器具もありました。
カトラリーのデザインは、ナポレオン帝政下の古典的なアンピール様式から19世紀末のユーゲント・シュティール(アール・ヌーヴォー)、アール・デコなどさまざまな様式があり、見惚れるばかりです。
また、店舗の奥の工房では、職人の方が型取りや装飾作りなどの作業をしています。
カトラリーは代々受け継ぎ使い続けるもので、家の紋章を施すなど、各家のデザインというものがあります。工房「ヤロシンスキー&ヴォーゴァン」では約5000人分の顧客のデザイン記録が残され、修理などにすぐに対応できるようになっています。
銀器は手入れを怠ると黒ずみなどができるので、扱いづらいという声も聞かれます。「ヤロシンスキー&ヴォーゴァン」の商品は、最後の仕上げ作業として表面に銀メッキを施します。これにより黒ずみを抑え、さらに食洗機にも対応できます。現代の生活に合う合理性も備えているわけです。