文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/海外プチ移住ライター)

意外かもしれないけれど、ドイツは日本と並ぶ温泉大国。温泉や入浴を意味する「バート」や「バーデン」と名の付く町が全国にある。2021年に世界遺産に登録されたバーデン・バーデンの名は、日本でも耳にしたことがある人が多いだろう。温泉好きな筆者も何度もリピートするほどお気に入りの、この町の楽しみ方をご紹介しよう。

ローマ時代から続く高級温泉保養地

四季の花々に囲まれたクアハウスはバーデン・バーデンの社交場。

フランクフルトから特急列車ICEで南へ向かい約1時間半。フランスとの国境に近い黒い森地方の北端に位置するバーデン・バーデンは、人口5万人強のこじんまりとした町だ。紀元前80年頃にこの地を占領していたローマ人により温泉がつくられたというとんでもなく長い歴史をもち、ビスマルクやナポレオン3世、ドストエフスキーにブラームスなども滞在した由緒ある温泉保養地としてその名を轟かせている。2021年には「ヨーロッパの大温泉保養都市群」のひとつとしてユネスコ世界遺産に登録された。

緑いっぱいの並木道リヒテンターラー・アレー周辺には高級ホテルが多い。

バーデン・バーデンにやってくるお金持ちたちは、瀟洒な高級ホテルに滞在しながら昼は森をハイキングしたりゴルフを楽しみ、夜はドレスアップしてレストランやコンサート、カジノへ出かけたりしてのんびりと優雅な休日を楽しむ。本物のセレブ・ウォッチングが楽しめるのもこの町ならではかもしれない。

そんな高級リゾートでありながら、庶民でも楽しめる懐の深さも併せ持つバーデン・バーデン。筆者にとっては、くたくたに疲れた時の駆け込み寺的な存在でもある。

2つの温泉施設で癒される

宮殿のような温泉、フリードリヒスバート。 (C)DZT/FrancescoCarovillano

バーデン・バーデンには2つの有名な温泉施設がある。1877年に開業した「フリードリヒスバート」は世界一美しい温泉といっても過言ではないだろう。療養の要素が強い大人のためのクア施設で入浴はコース制。異なる温度の熱蒸気室やサウナなどを順番に回り、途中で身体をゴシゴシ洗われたりして最後に休憩室で毛布にくるまれてコースが終了する。

対する「カラカラテルメ」は大規模な温泉プールと屋内外の様々なサウナを有し、家族やグループで楽しめるレジャー感覚のクア施設。森の中のサウナは最高に気持ちが良い。趣向を凝らしたアウフグース(※タオルで蒸気をあおぐサービス)が用意されており、合間に休憩や食事をしながら一日中のんびりと過ごすことができる。

どっちがおすすめ? と聞かれると、う~ん両方、としか答えようがない。どちらの施設も本当に素晴らしいので、できれば時間をゆっくりとって楽しんでほしい。きっと唯一無二の温浴体験ができるはず。

伝説のカジノに潜入

ドストエフスキーが散財した伝説のカジノ。ガイドツアーに参加すれば撮影も可能。

ドイツの温泉保養地には湯治客の社交場となるクアハウスがあり、カジノが併設されていることが多い。ドイツで最も美しいといわれるバーデン・バーデンのカジノは、ドストエフスキーやブラームスなども訪れたという由緒ある娯楽場。せっかくだから社会見学に、と足をふみいれてみると、想像を絶するきらびやかな世界が広がっていた。一攫千金を狙ってみるのもいいけれど、歴史的建築物としても一見の価値あり。ガイドツアーに参加してすみずみまでじっくり見学してみよう。

クアハウスの隣にあるトリンクハレでは温泉水を飲むこともできる。

黒い森地方の郷土料理とさくらんぼケーキ

ボリューミーな豚肉料理。付け合わせのもちっとしたショートパスタ「シュペッツレ」はこの地方の郷土料理。

バーデン・バーデンは小さい町ながら、高級リゾートにふさわしくレストランが充実している。他ではなかなか味わえない地元のワインや郷土料理を心ゆくまで堪能したい。近郊のワイナリーを訪ねるのもおすすめだ。

黒い森のさくらんぼケーキ。可愛らしい姿だけれどかなりお酒がきいた大人味。

「シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ」も忘れずに。舌をかみそうな長い名前は日本語で「黒い森のさくらんぼケーキ」という意味。黒い森特産のさくらんぼのお酒をふんだんに使ったチョコレートケーキで日本人にも人気が高い。今ではドイツ中で作られているが、やはり本場で食べるとおいしさも倍増。歴史ある名店「カフェ・ケーニヒ」で過ごすティータイムは至福のひとときだ。

* * *

バーデン・バーデンで豊かな自然に囲まれて温泉やグルメを堪能していると、くたびれた心身が癒されて、ぐんぐん活力がわいてくる気がする。いつかまた、元気をチャージしに出かけたい。

バーデン・バーデン観光局 https://www.baden-baden.com/en/

文・写真/坪井由美子
ライター&リポーター。ドイツ在住10数年を経て、世界各地でプチ移住しながら現地のライフスタイルや文化、グルメについて様々なメディアで発信中。著書『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

 

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