文・写真/中野千恵子(海外書き人クラブ / インドネシア・ジャカルタ在住ライター)

ジャワ島の中央部に位置するジョグジャカルタ特別州は、4つの県と1つの市で構成されている。スルタン(王)が暮らす王宮があるジョグジャカルタ市、ユネスコ世界文化遺産のプランバナン寺院(https://borobudurpark.com/en/temple/prambanan-2/)や活火山のムラピ山があるスレマン県などは、世界中から多くの観光客が訪れる観光の名所でもある。一方、州の南東部にあるグヌンキドゥル県はこれといった名所がなく、観光客にはあまり知られていない。 

グヌンキドゥルとは、ジャワ語で「南の山」という意味で、実際、県の南半分はグヌンセウ(千の山)と呼ばれる標高約500mの石灰岩の丘だ。この丘は、180万年前に海から隆起した石灰岩が雨水や地下水によって浸食されてできた世界有数の熱帯カルスト地形で、グヌンセウ・ジオパーク(https://en.unesco.org/global-geoparks/gunung-sewu)として2015年にユネスコから世界ジオパークに認定されている。こうした地質的な特徴から、グヌンキドゥル県には大小さまざまな鍾乳洞が数百あるといわれる。

田園風景が広がるグヌンキドゥル県。土地は痩せているので、主な農作物はシンコン芋(キャッサバ)だ

グヌンキドゥル県が観光面で脚光を浴びるようになったのは、1983年の英国の洞窟調査隊による大がかりな調査が行われてからのこと。この調査により発見された洞窟の一つが、今回ご紹介するゴア・ジョンブラン(ジョンブラン洞窟)だ。自然環境を破壊しない範囲で観光開発が行われ、2011年に一般公開されると、写真映えするユニークなスポットとして一躍人気を集めた。構造的には、直径約50m、深さ約64mの垂直の洞窟と、水平に約300m伸びる洞窟が組み合わさっており、終点は石灰岩の崖になっている。

ゴア・ジョンブランの入り口部分の垂直の洞窟は、まるでクレーターのようだ

筆者は何度かこの洞窟を訪れているが、訪問はいつもなかなかスリリングだ。まず、地面にクレーターのように開いた垂直の洞窟を、人力で昇降するロープで下降する。ヘルメットをかぶり、命綱もしっかりつけて降りるのだが、地面から足を離す瞬間が一番ドキドキする。約1分後に到着する洞窟の底は、低木が生い茂るジャングルになっており、湿度でモワッと感じる。ここから水平の洞窟までは、アップダウンがあり、ぬかるんで歩きにくい道を進む。手と服をドロドロにしながら水平の洞窟の入り口に到着すると、今度は滑りやすく、真っ暗な洞窟の中を歩く。

垂直の洞窟の底へ降りるため、ロープを装着した観光客
洞窟の底に到着する様子
ジャングルのぬかるんだ斜面を、水平の洞窟の入り口方向に進む

ここまでは単なる洞窟探検でしかないが、ゴア・ジョンブランはそれでは終わらない。なぜなら、その道の行き止まりのドーム状の洞窟の天井部分にぽっかりと穴が開いており、そこから太陽の光がカーテン状になって真っ暗な洞窟に差し込むという感動的な光景を作り出しているからだ。

暗闇の先に、光のカーテンが見える感動の光景

しばらく眺めていると、光は太陽の動きで少しずつ角度が変わる。また、ときどき雲がかかるのか強弱があり、まるで意思を持って揺らめいているように見える。そんな幻想的な天からの光に身を置くと、長年の願いが叶うような不思議な気持ちになる。大自然の奇跡が生み出したこの光景を、筆者は一生忘れない。

洞窟の天井部分の穴から射す光
洞窟内は不思議な形の岩が多い
光の中に立つ

なお、ゴア・ジョンブランは雨季には大変滑りやすくなるので、見学は3月ごろから10月にかけての乾季が適している。また、太陽の位置の関係で午後には洞窟に光が射さなくなるので、見学は午前中のみだ。1日の入場人数にも制限があるので、訪問の際は事前に予約しておくといいだろう。

ゴア・ジョンブラン観光オフィシャルサイト https://wisata.gunungkidulkab.go.id/gua-jomblang/
ゴア・ジョンブラン 住所 Jetis, Pacarejo, Semanu, Kabupaten Gunung Kidul, Daerah Istimewa Yogyakarta, Indonesia

文・写真 / 中野千恵子(インドネシア・ジャカルタ在住ライター) 2002年よりインドネシア・ジャカルタ在住。在留邦人向け月刊誌「さらさ」編集長としてインドネシアの食、文化、観光などについて発信中。ジャワの伝統音楽ガムランにも精通。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

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