コロナ禍で変化したことのひとつに、リモートワークの普及が挙げられるかもしれません。新しい生活を体験して、2拠点居住生活を始めたり、移住して自然に触れて暮らして自分で食べるものを自分たちで作りたい、と新しい土地での生活を選ぶ人も増えています。

10年前、新しい土地で、大地にやさしい農業を再スタートした人たちの移住のきっかけは、東日本大震災による原発事故でした。そこで、移住を決意した有機農家を支援しようと活動を始めたのが、トゥルースピリットタバコカンパニーという会社。「大地に責任を持つ」という理念をかかげスタートした、「SHARE THE LOVE for JAPAN」と名付けたこの活動は、現在では、「大地にやさしい農業」を志す農家のコミュニティに成長し、勉強会や交流会など様々な活動を実施して、今年で設立10年目を迎えました。

「SHARE THE LOVE for JAPAN」は、農家同士の交流の場でもある。

本書『SHARE THE LOVE ⼤地を愛する⼈々』は、⾃然に寄り添う農業を通して、環境保全、安⼼安全な⾷の提供、地域コミュニティの活性化などに取り組みながら、既存の⼤量消費社会の価値観を超える真の豊かさや幸せを求めて、⼤地と共に⽣きようとする農家57人の生き方を1冊にまとめたビジュアルブック。10年にわたって撮影された豊富な写真と農家へのインタビューで構成され、閉塞した社会に⾵⽳を空けて豊かな未来へのビジョンを提⽰する⼀冊です。

震災によって移住を余儀なくされた農家の言葉も、地球環境を少しでもよくしたいと考えて新規就農した農家の言葉も、コロナ禍を経た今もリアリティをもって伝わってきますが、震災から10年経った現在、食を巡る環境を改めて見ると、決して手放しで喜べる状況ではありません。

2021年9月に発表された日本の食糧自給率は37%(資料1参照)と過去最低で、先進国中もっとも低い数値です。日本の食糧は海外からの輸入に頼っているのが現状で、しかも、近年の気候変動の影響で、世界中で洪水や旱魃が起こり、海外からの食糧の輸入も次第に危ぶまれる事態になりつつあります(資料2参照)。これからは、お金を出せばいつでも良質な食品を買えるとは言えない時代になるかもしれません。東京の自給率だけ見れば、1%に満たない(資料3参照)と知る人はあまり多くはないでしょう。

日本国内の自給率の低下は、農業人口の減少によるところが大きく、生産者は高齢化し(資料4参照)、田んぼや畑を続けていけなくなっています。それに伴って、農的な暮らしを基本としてきた地方のローカル・コミュニティも過疎化が進み、機能しなくなっています。「食を守ることは国を守ること」と警鐘を鳴らし続けているのは、料理家の辰巳芳子さんですが、まさに、国家の基本が危うくなっていると言えるかもしれません。

食は、私たちの生命を支える基本でもあります。生物学者の福岡伸一氏は、「食べることは、自分の体の分子を食べ物の分子と交換して、生命を刷新すること」(資料5参照)と「食べることの本質」を論じているように、安心・安全な食は、私たちの身体にダイレクトに影響します。近年、遺伝子組み替え食品やゲノム食品などが増えつつある中で、安心・安全な食の確保は、ますます重要になっていると言えるかもしれません。

このように、一見豊かな「日本の食」は、実際には非常に危機的な状況にあると言えますが、日々、土と格闘しながら、これらの問題を解決しようと実践している人たちが存在しています。それが、本書でご紹介した「SHARE THE LOVE for JAPAN」のメンバーをはじめとした志ある農家であり、その意味で、彼らは「未来への希望の種」と言えるかもしれません。

大手企業への内定を断って有機農家の研修を受けて就農したレゲエ・ミュージック好きの「芽吹音農園」の石原潤樹さん、大学で宇宙物理学を専攻し、エンジニアを経て農家になった「eminini organic farm」の東樋口正邦さん、パーマカルチャーの本場、オーストラリアでパーマカルチャーの創始者と暮らし、日本でパーマカルチャー・ライフを実践する「ONE TREE」の天野圭介さん、有名レストランのシェフから自分で野菜を作り料理を供する農家に転身した「restauro」の杉浦秀幸さん、尊敬する祖父の米作りを受け継ぐ田中真由美さんetc.。

本書は、農家一人一人の生き方と考え方をロングインタビューで網羅し、「自由に生きることの大切さ」を伝える内容にもなっています。写真は気鋭の写真家・公文健太郎さんが10年にわたって撮影した深みのあるビジュアル。本書に登場する大地に生きる人たちの骨太な生き方は、「先の見えない危機的状況」に対するひとつの回答を示唆してくれているようです。

私たちが自分で「大地にやさしい農業」を始めようと思っても、仕事があったり住宅ローンがあったりと、実際に農業を行うのは難しいかもしれません。しかし、食べる人たちの健康を思い、地球環境を守りながら日々田畑に立つ人たちのことを知って、彼らが育てた食材を買い支えて、応援することで、私たちも志ある農家の生活と仕事と日本の食を少しでも支えることができるかもしれません。

全国に広がっている「SHARE THE LOVE for JAPAN」の農家のネットワーク。

本書に登場する近隣の農家さんを知ったら、彼らの作った野菜を食べてみてください。そして、美味しかったら遊びに行ってみてください。本書は、読者と心がつながる農家さんとの出会いの一助となる「生命とのつながり」のツールでもあるのです。

* * *

「SHARE THE LOVE for JAPAN」の 公式HPには、さらに詳しい活動の様子と農家さんの声が掲載されています。https://sharethelove.jp

発売記念イベントについては、以下のリンクをご覧ください。
https://sharethelove.jp/10th/event/

資料1 農林水産省「日本の食糧自給率」(令和2年度) ttps://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html

資料2 国際環境NGO「FoE JAPAN」資料 https://www.foejapan.org/climate/about/effect_food.html

資料3 農林水産省「都道府県別食糧自給率について」(令和元年度) https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/zikyu_10.html

資料4 農林水産省「農林業センサス」(2020年) https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/2020/

資料5 福岡伸一著『生命と食』(岩波ブックレット)より https://www.iwanami.co.jp/book/b254274.html

<書誌情報>
『SHARE THE LOVE ⼤地を愛する⼈々』
発売⽇:2021年11⽉9⽇(⽕)
定価:本体価格 2,700円(+税)
仕様:B5判変形/並製/オールカラー
ページ:240ページ
ISBN:978-4-910352-08-4

<イベント情報>
■代官⼭ T-SITEにて「SHARE THE LOVE for JAPAN ⼤地のマルシェ」開催!
代官⼭蔦屋書店に隣接するイベントスペースDAIKANYAMA T-SITE (GARDEN GALLERY)にて、STL10周年&出版記念「SHARE THE LOVE for JAPAN ⼤地のマルシェ」を開催します。
全国から集まったSTL参加農家による精魂込めて作ったお⽶や野菜・加⼯品の販売、本書籍の販売会も⾏います。
⽇時:2021年11⽉20⽇(⼟)、21⽇(⽇) 両⽇10:00〜17:00(予定)
会場:DAIKANYAMA T-SITE (GARDEN GALLERY)
住所:東京都渋⾕区猿楽町16-15 最寄り駅/東急東横線「代官⼭駅」
⼊場:無料

<本書のお問い合わせ先>
株式会社トゥーヴァージンズ
担当:⼩宮(広報)・住友(営業)
東京都千代⽥区九段北4-1-3 ⾶栄九段北ビル8F
電話:03-5212-7442
FAX:03-5212-7889
Mail:info@twovirgins.jp
*プレスリリース画像以外の写真、詳細をご希望の⽅は上記連絡先までご連絡ください。

文/尾崎 靖
写真/公文健太郎

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