京焼の歴史は一説によれば、大名が公家や将軍家に故郷の焼き物を贈るため、職人を京都まで呼び寄せたことに始まる。さまざまな土地の焼き物文化が融合して発展した技術を受け継ぐのが、京都・岩倉にある窯元「晋六窯」。岩倉は平安京の御所建造の際、田んぼの粘土をすくって瓦やカワラケを作った土地柄である。同社の創業は昭和7年。京焼の優雅さ、民芸のおおらかさと素朴さを併せ持った温かみのある陶器を作り、広く支持される窯元だ。
「京都の番茶は茶葉が大きく、茶漉しに詰まらない急須がほしいという依頼を受けて祖父が考案したものが本品です。もう60年以上愛され続けています。特徴は茶漉しの穴を多くするために設計したペリカンのくちばしのような大きな注ぎ口。2煎目を淹れる際、口から湯を注ぐと詰まった茶葉も急須の中に戻るので、おいしく淹れられます」と3代目の京谷美香氏は語る。
お茶を淹れる前に急須を熱湯で温めると蓋に水滴がつくが、広い注ぎ口に蓋を置けばテーブルが濡れず便利。長く使ってほしいと蓋の交換は無料だ。
使い手の暮らしにとことん寄り添った、ぬくもりあふれる茶器である。
【今日の逸品】
南蛮ペリカン急須(R)
晋六窯
12,100円~(消費税込み)