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文/印南敦史

自分はどんな最期を迎えたいか、を話し合う「人生会議」|『人生のしまい方 残された時間を、どう過ごすか』

『人生のしまい方 残された時間を、どう過ごすか』(平方 眞 著、CCCメディアハウス)の著者が本書の冒頭でクローズアップしているのは、「人生会議」ということばだ。

厚生労働省(以下、厚労省)の広報では、人生会議とは「人生の最期にどんな医療を受けたいか」「最期のときをどこで迎えたいか」など、本人を中心に話し合うことが例に挙げられています。
つまり人生会議とは、人生の最期の時間をどう過ごすかを周囲の人と共に考えること、人生のしまい方を考えるための話し合いだということです。(本書「はじめに」より引用)

著者は緩和ケア医師。本書では、多くの患者と時間を共有してきた経験を軸として、「人生の最終段階」での話し合いをケーススタディとして紹介しているわけだ。

ちなみに「なぜ話し合いが必要なのか?」というその問いに対して、著者は「命に関わるなにかが起きてしまったとき、多くの場合、自分の意思が伝えることができなくなっているから」だと答えている。

人生会議のもともとの名称は、ACP:Advance Care Planning(アドバンス・ケア・プランニング)といいます。直訳すると、次の通りです。
Advance=一歩進んだ
Care=ケア(世話、看護、養護、介護)
Planning=計画すること
(本書「はじめに」より引用)

医療や介護の現場では以前から、ACPと呼ばれていた。しかしそれを広く一般の人にも浸透させていこうということで、2018年に「人生会議」と名づけられたのだという。基本的な考え方は、以下のとおりだ。

命に関わる病気や怪我をする可能性は誰にでもあるが、命の危険が迫った状態になると、約70%の人は、医療やケアなどを自分で決めたり望みを伝えたりすることができなくなる。そこで、もしものときのために、自分が望む医療やケアについて前もって考え、繰り返し話し合い、共有する。

そんな取り組みを「人生会議(ACP)」と呼ぶのである。

とはいっても、細かな定義のようなものがあるわけではないようだ。そこで本書では医療やケアのみならず、人生の最期を考えるさまざまな話し合いを、広い意味で人生会議と捉えている。

ところで、人生の最期に大切にしたいことと聞いて、どんなことをイメージするだろうか?

・仕事や社会的な役割をできるだけ続けたい
・好きなことや趣味を楽しく続けたい
・家族の負担にならない範囲で、家で暮らしたい
・犬や猫などペットと一緒に暮らしたい
・痛みや苦しみがあるのはいやだ
・無理な延命治療は受けたくない
(本書「はじめに」より引用)

著者が例示しているように、たとえばこのようなことが頭に浮かぶかもしれない。いずれにしても「大切にしたいこと」「やりたいこと」は人それぞれ違うので、自由に思いつくままに挙げてみればいい。

重要なポイントは、「会議=話し合い」はひとりではできないということ。すなわち、必ず話をする相手が必要なのである。当たり前すぎることではあるが、配偶者、親、子ども、友人、医療従事者など、“もしものときのことを話しておきたい人”“お互いの価値観を認め合える人”と一緒に、自分の望みについて話し合っておく必要があるのだ。

だが、その話し合いは、いつ行えばいいのか? 最期についての話し合いを積極的にしようという人は現実的に少ないかもしれないので難しいところだが、著者は、3段階くらいに分けてタイミングを考えておくべきだという。

(1)まだ元気で力があふれているとき
(2)病気になったり、年齢を感じたりしたとき
(3)いよいよ終わりが迫ってきたと思ったとき
(本書39ページより引用)

元気で力があふれているときは、「もしものときのことを考えるなんて、縁起でもない」と感じるかもしれない。しかし、その時点で「起こる確率」は低いのだから、気楽な話し合いでかまわないわけだ。

考えるのが難しいのであれば、「自分はどんな最期を迎えたいか」を想像し、雑談するだけでもいい。個人的には、現時点ではこれがいちばん自然で無理がなく、穏やかに実現できそうな方法ではないかと感じる。

だがそののち年齢を重ねていけば、話す内容も自ずと変わっていくだろう。そのたびに、自分の最期について考え、口にすればいいのだ。そうやって回数を重ねていけば、「いよいよ迫ったきた」と感じたときにも、頭が真っ白にならずにすむと著者はいう。

たしかに、「最期までには、まだもうちょっとあるかな?」と考えることのできるいまから、少しずつこうして考えてみるべきなのかもしれない。

そうすれば、将来的な不安を多少なりとも減らすことにつながるだろうから。そして考えるにあたってのヒントとして、さまざまな話し合いのケースが紹介された本書を参考にしてみるのもいいのではないだろうか?

『人生のしまい方 残された時間を、どう過ごすか』

平方 眞 著
CCCメディアハウス
¥1400(税別)
『人生のしまい方 残された時間を、どう過ごすか』

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。

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