桐島かれんさんと、夫で写真家の上田義彦さんは、ともに工芸好き、美術好き。
旅の思い出が詰まった品々を輝かせる、かれん流インテリアのコツとは。
【前編はこちらです。】
暮らしの中のアート&クラフト
アジアの漆器、人形、壺……旅の途中で出合った工芸品や雑貨が東西混淆で並ぶわが家。
大切な思い出が詰まった品々を輝かせるために心がけている、私流のインテリアの取り入れ方をお伝えします。
撮影/上田義彦 構成/高橋亜弥子
古いものは長い時間をかけて、何人もの人の手を渡り継いで今ここに-
以前、夫が写真のギャラリーを主宰していたのですが、そのときに海外に比べて日本では、生活空間に写真や絵を取り入れることがまだまだ浸透していないことに気づいたといいます。 ギャラリー関係者の間でよくいわれるのは、アートを暮らしに取り入れるためには3つの壁を乗り越える必要があるということ。1番目はアートは難しいと思う“心の壁”。2番目は部屋の中にアートを飾る壁やスペースがない“家の壁”。3番目は、購入する“財布の壁”。たしかに、これらの壁はあるかもしれませんが、もしも、本当に気に入った作品に出合ったら、えいや!と冒険をして買ってみるのもいいと思うのです。高額なものには、なかなか手がでませんが、好きな絵や写真とともにある人生は、どんなに豊かなものになることでしょう。
私が人生で最初に自分のお金で買ったアート作品は、コクトーの複製画です。美術館でコクトー展を開催しているのを見に行き、ミュージアムショップでスペシャル・エディションと紹介されているのを見つけて3枚くらい購入しました。プリントなので高くはない絵ですが、額装して、ずっと大事に今でも部屋に飾っています。
絵画や写真を飾るときにいちばん気をつかうべきポイントは額装といえるかもしれません。額装にひと手間かけるだけで、ぐんと格が上がります。量販店のフレームではなく、額装屋さんに頼んで、作品にぴったり合うようにフレーミングしてもらうと、同じ絵でもまったく違った景色になるので、ぜひ試していただきたいです。
祖父母も、母も美術が好きで、絵画が身近な環境で育ったため、私ももちろんアートが好きになったわけですが、果たして子どもたちはどうかしら、と思っていました。このほど娘たちがニューヨークの大学に進学して、ふたり暮らしを始めたのですが、送ってきてくれた部屋の写真を見ると、ベッドルームの壁にベッドカバーとおそろいのテキスタイルを額に入れて、アートのように飾っていて。ちゃんとインテリアに気をつかっているんだと、私が受け継いできたことが伝わっている気がして、うれしくなりました。
何も置かないシンプルな部屋が好きな人もいますが、絵でも写真でも工芸品でも私は、人の手によってつくられたものが身近にあるほうが落ち着きます。特に古いものは、長い時間をかけて、何人もの人の手に渡って、今、ここにある。そう思うだけで胸ときめきます。ものが増えることを恐れる日は永遠に来なさそう――。次回の旅でもまた、新たな宝物との出合いを心待ちにしている私なのでした。
KAREN’s VOL.1 2019/春・夏
桐島かれん LIFESTYLE & TRAVEL
発行/KADOKAWA
定価/1500円(税別)
桐島かれんさんが責任編集のムック『KAREN’s』が誕生しました。巻頭は写真家の上田義彦氏撮りおろしの50ページにわたる「かれん流 ハワイの休日」。後半には、葉山の家の夏じたくなどのインテリアや、スタイリストの金子夏子さんとの「大人のおしゃれ対談」、アート&クラフト、お花、お料理、世界のお弁当事情のエッセイなど、かれんさんからのライフスタイル提案が詰まっており、大人の道先案内となる一冊です。
桐島かれん Karen Kirishima
モデル。1964年生まれ。1986年、大手化粧品会社のイメージキャラクターに起用され、脚光を浴びる。1993年には写真家の上田義彦氏と結婚し、四児の母に。ライフクラフトブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブディレクター。この春、自ら責任編集をつとめるライフスタイル&トラベルムックの『KAREN’s』を上梓。多彩な領域で活動を続けています。
Instagram@houseoflotuskaren