桐島かれんさんと、夫で写真家の上田義彦さんは、ともに工芸好き、美術好き。
旅の思い出が詰まった品々を輝かせる、かれん流インテリアのコツとは。
暮らしの中のアート&クラフト
アジアの漆器、人形、壺……旅の途中で出合った工芸品や雑貨が東西混淆で並ぶわが家。
大切な思い出が詰まった品々を輝かせるために心がけている、私流のインテリアの取り入れ方をお伝えします。
撮影/上田義彦 構成/高橋亜弥子
旅先から抱えるように連れて帰ってきた大切な宝物たち
夫も私も旅が多い職業柄、世界各国で買ってきた工芸品が家の中にあります。ふたりとも人の手によってつくられた、静かな佇まいのものが好きなのです。長い時間の物語を感じさせるようなアンティークも好き。社会情勢が刻々と変化する世界の中では、初めて訪れた街で出合ったものが、次に訪れたときにあるとは限りません。その儚さを知っているからか、それとも無意識の言い訳なのか、「これは、きっと運命の出合いだ」と、異国の地ですっかり熱に浮かされてしまい、またひとつ手にしてしまうのです。
同じ工芸好き、美術好きでも、夫と私の志向は少々違います。たとえば、20年ほど前にふたりそろってアジアのアンティークにはまったときも、夫は、壺や仏像に向かったのに対して、私は、家具やかご、器、布に夢中になりました。アンティークは興味がなければ、ただの古びた品物にしか見えないかもしれませんが、恋に落ちた者の目には、光り輝く宝物に映るのです。
旅先から抱えるように大事に連れてきた宝物を、家の中のどこに置くか。家に帰ってきてからは、それが問題になります。ただ、やみくもに置いても、文字通り宝の持ち腐れになってしまう。素敵な舞台を探して、部屋の中をあちらこちら見渡してみます。チェストの上、コンソールテーブルの上、本棚やテーブルの上などなど。
昔の日本の家には、床の間があって、掛け軸と花入と、ときどき香炉を置いたりして、美しいものを“見せる場所〟がありましたが、現代の住宅事情では床の間があるお宅は少なくなってしまいました。欧米の家には、暖炉を囲むマントルピースがあって、その上を小物で飾ることが多いようです。わが家では、リビングにある幅広のチェストの上や、玄関の棚の上、コンソールテーブルの上などが、床の間代わりの定位置になっています。
さて、置きたい場所が決まったら、インテリアを飾るときの私ならではの好みというか、簡単な決まりごとがあります。それは、ものを単品では置かないこと。言い換えれば、ほかのものと一緒に置くこと。具体的には、壁に飾る「絵」、「小物(オブジェ)」、花などの「植物」の3つで空間を構成するのです。
いろいろ組み合わせてみると、相性がわかってきますが、たとえば、最初に壁に飾る絵や写真を決めたら、その中にある色から小物と植物をつないでいきます。ジョルジュ・ブラックの抽象画のリトグラフを飾ったときには、その絵に描かれた茶色やグリーンのシックな配色と相性がいいオブジェを置いて。その横や近くに花や植物を置くと、絵やオブジェが生き生きとして、まとまりが出ます。「絵」「小物」「植物」で構成する一枚の静物画を描くような気持ちにも似ているのかもしれません。
私は、年代も西洋も東洋のものも関係がなく、ミックスして飾るのが好きなのですが、色を基本にして、絵画的にまとめていくのは、ぜひ試していただきたい一案です。
ものの出自や背景にある物語の文脈でまとめる方法もおすすめです。たとえば、漆器や仏像を並べるときに、アジアで制作されたものだけにすると、統一感が出ます。こうすれば、私が買ってきたものも、夫が買ってきたものも、なんとなくまとまりが出てくるから不思議です。
余談ですが、素敵な空間になったと安心していても、ふと気がついたら、夫が違う組み合わせにしていることも少なくありません。「あれ? なぜここに?」と、いつの間にか知らないものが中心に置かれていることなど日常茶飯事です。夫には夫の美意識があって、こうしたいという構図があるのです。さらには、私が気に入っていたものを、さりげなく葉山の家や山の家に持っていかれていることも。それに気がついた私が東京の家にこっそり持って帰ってきたりして、ぐるぐると巡る小物たち。インテリアをめぐるわが家の静かな攻防戦です。
【後編に続きます】
KAREN’s VOL.1 2019/春・夏
桐島かれん LIFESTYLE & TRAVEL
発行/KADOKAWA
定価/1500円(税別)
桐島かれんさんが責任編集のムック『KAREN’s』が誕生しました。巻頭は写真家の上田義彦氏撮りおろしの50ページにわたる「かれん流 ハワイの休日」。後半には、葉山の家の夏じたくなどのインテリアや、スタイリストの金子夏子さんとの「大人のおしゃれ対談」、アート&クラフト、お花、お料理、世界のお弁当事情のエッセイなど、かれんさんからのライフスタイル提案が詰まっており、大人の道先案内となる一冊です。
桐島かれん Karen Kirishima
モデル。1964年生まれ。1986年、大手化粧品会社のイメージキャラクターに起用され、脚光を浴びる。1993年には写真家の上田義彦氏と結婚し、四児の母に。ライフクラフトブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブディレクター。この春、自ら責任編集をつとめるライフスタイル&トラベルムックの『KAREN’s』を上梓。多彩な領域で活動を続けています。
Instagram@houseoflotuskaren