取材・文/ふじのあやこ

【娘のきもち】姑に家に寄り付かない父親。大好きだった母親は家にいることが嫌いだった~その1~

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「母親は家族の太陽のような存在。ただ元気に精一杯生きてほしいのが一番の願いです」と語るのは、奈々子さん(仮名・40歳)。彼女は現在、都内で団体職員として働いています。お話を聞いている間、終始目を見てゆっくり丁寧に話されており、所作などから礼儀正しいキチンとした印象を受けます。

朝から行われる母親と祖母の言い合い。父の浮気もあり、家族はバラバラだった

奈々子さんは東京都の郊外出身で、両親と2歳下に弟のいる4人家族。父親は大工、母親は精密部品などを作る工場の作業員としてフルタイムでパートに出ていたと言い、家には父方の祖母も同居していたそう。躾などは両親よりも祖母からよく受けたと語ります。

「うちの両親は放任主義というか、特に父親は私のことに関して何も口を挟んできませんでした。躾というか、小言が一番多かったのは祖母でした。勉強しなさいとかはもちろん、昔の人なので『女性はこうあるべき』といった考えを押し付けられていて。極端だったのは『教室で男の人と2人きりになったら、すぐに教室を出なさい』と、男性を避けろみたいな考え方を持っていたこと。その発言にはあまりにびっくりして、今でも覚えていますから」

そして家には典型的な嫁姑問題があり、母親と祖母の言い争う声を小さい頃からよく聞いていたと言います。

「母は私たち子供には優しいんですが、祖母にはけっこう言い返すタイプみたいで。朝、母と祖母の言い争う声で目が覚めることがよくありました。言い争いの内容は、祖母が母の料理の味付け、洗濯物の干し方や部屋の片づけ方などを注意して、それに母が言い返すといった感じです。父には姉と妹がいたんですが、その2人のことを祖母は母と比較しながら褒めていたんです。嫌味ですよね。母は私に『おばあちゃんのいる家にいたくないからフルタイムで働いている』と言っていました」

2人の争いを父親は静観するだけ。嫁姑問題の他に、母親を悩ますタネがもうひとつあったそう。それは……。

「父親の浮気です。私が小さい頃は家に女の人から電話がかかっていたんです。当時家には黒電話があって、黒電話って2台あっても同じ回線なので、1台が通話中にもう1台からその話を聞くことができたんです。それを知って、一度父とその女性の会話を聞いてしまったことがあって。本当に小さくてよく意味がわかりませんでしたが、今思うと……。そんな感じで両親の仲も良くなかったんですが、離婚という話になったことは一度もありません。祖母とも同居していたし、世間もまだそこまで離婚も一般化していなかったので、できなかっただけかもしれませんが」

【次ページに続きます】

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