文・石川真禧照(自動車生活探険家)

ドイツのBMWに5シリーズというミドルクラスの乗用車がある。初代がデビューしたのは1972年なので50年以上の歴史のあるモデルだが、2023年に7回目のフルモデルチェンジを受け、新型になった。その時から2年、新型5シリーズに、新しいモデルが加わった。もともと5シリーズは4ドアセダンとステーションワゴン(BMWはツーリングと呼んでいる)がカタログモデルだが、4ドアセダンに、ホイールベースを延ばしたL(ドイツ語でLang=ラング 英語のLong=ロング)というモデルが加わった。



標準の5シリーズと比べ、全長が115mm延び5175mmに、ホイールベースが110mm延び3105mmになった。全高や全幅は標準モデルと同じだ。このロングモデルは上級モデルの7シリーズと同じホイールベースなので、室内、とくに後席の居住性が向上している。なぜこのようなモデルをBMWは開発し、日本市場に投入したのだろう。
その理由は、最上級モデルの7シリーズの車体が、余りにも大きくなり、スタイルも周囲を圧倒する威圧感のある車になってしまったことで、それまで上級車の7シリーズに乗っていた上顧客が離れてしまったからだった。
BMWの良さは、ライバルのメルセデス・ベンツに比べ、スポーティで、車好きの人たちが好んで乗る、ある意味マニアックな車として人気を得てきた。しかし、最上級モデルは、威風堂々として立派に見えたほうがよい、という顧客からの声に対応し、BMWとして7シリーズをそちらの方向に転換した。車体の大きさだけでなく、フロントグリルも押し出しの強い、大型の派手なグリルを新型で採用した。その結果、販売面ではある程度成功したが、スポーティでマニアックな、従来からの熱心な顧客には好評とは言えなかった。
旧型に乗り続けたり、ほかのブランドにいってしまった客もいた。車体も大きくなり、不満の声もあった。




そこで浮上したのが、7シリーズと同じ様な室内で、スポーティさを残した車だった。7シリーズよりも全幅は50mm狭く5シリーズをベースにホイールベースは7シリーズと同じにした。車名は5シリーズ・ロング。
新型5シリーズは、50年以上の歴史の中で、今回、初めて電気自動車(i5)を加えている。このほかにディーゼルやガソリンハイブリッドエンジン車もあるが、ロングモデルは、電気自動車と、ガソリンハイブリッド車に用意された。
今回、撮影に取り上げたのはガソリンハイブリッド車だが、試乗は、電気自動車も行ってみた。




最初にハンドルを握ったのはガソリンエンジンの525Li。フロントグリルは5シリーズと同じなので、スポーティ感がある。運転席に座っても、計器盤や座席の感触は通常のセダンと同じ。違うのは、運転席からうしろを振り向いたときの景色。後席がはるか後方にある。後席に座り、背もたれに体をあずけた姿勢で、前席と会話すると、いつもより少し大きな声を出さないと会話ができない感じがする。この広さ感は、1クラス上の7シリーズと同じだ。これなら十分に後席優先のVIPカーとしても通用する。



でも、BMWの乗用車の本領は運転する楽しさにある。それは、後席重視の車になっても同じだった。むしろ、ホイールベースが長くなったことで、走行安定性は向上した。電子制御の4輪操舵システムもいい仕事をし、スポーツ走行も可能だった。
仕事のときは後席で考え事をし、休日は自らがハンドルを握り、運転を楽しむ。これがBMWのVIPカーの理想的な使い方。こういう使い方を待ち望んでいた人は日本でも意外に多かったようで、販売も好調という。



電気自動車のi5ロングもモーターだけの運転は、トルクが太く、電費も普通に乗っても450kmぐらいは充電なしで走行できるので、興味のある人は、一度試乗してみることをすすめたい。但し、試乗の期間は最低一週間。その間で自らと電気自動車との相性を極めてほしい。それが、いい車に長く乗るコツだ。
BMW/525Li エクスクルーシブ Mスポーツ
| 全長×全幅×全高 | 5175×1900×1520mm |
| ホイールベース | 3105mm |
| 車両重量 | 1790kg |
| エンジン | 直列4気筒ガソリン マイルド ハイブリッド 1998cc |
| 最高出力 | 190ps/5000rpm |
| 最大トルク | 310Nm/1500~4000rpm |
| 駆動形式 | 後輪駆動 |
| 燃料消費率 | 15.1km /L(WLTC) |
| 使用燃料/容量 | 無鉛プレミアムガソリン/ 60L |
| ミッション形式 | 8速AT |
| サスペンション形式 | 前:ストラット 後: マルチリンク |
| ブレーキ形式 | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ベンチレーテッドディスク |
| 乗員定員 | 5名 |
| 車両価格(税込) | 960万円 |
| 問い合わせ先 | 0120-269-437 |

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。
撮影/萩原文博





