2世帯で暮らすために唯一決めたこと

由美佳さんが35歳のときに離婚で実家に戻り、母親と由美佳さん、そして2人の子どもとの4人暮らしがスタートした。父親は離れて暮らしていたが、孫に会いたいからなのか、しょっちゅう実家に顔を出すようになっていたという。

「子育てのために仕事をセーブしているときの離婚だったので2人の子どもを抱えて東京で暮らしていくことができずに実家に戻ることになったんです。離婚については両親は心配してくれたけれど、実家に戻ることには母親はとても嬉しそうにしてくれました。

私と子どもたちが実家に戻ってからは、父親も実家で晩御飯を食べるようになり、その後、下の子(男児)と一緒にお風呂に入ってから1人暮らしの家に戻る生活になっていました。休日なんて朝から晩まで孫と過ごして、遊び疲れて夜にはソファで寝てしまうこともありました。律儀に目が覚めると自分の家に戻っていましたがね」

口出しするべきではないことはわかっていたが、母親に父との同居について聞いてみたことがあった。母親は「お金がもったいないわよね」と言った。

「お金のせいにしていたけど、母は父と一緒に暮らしてもいいと思っていることは伝わり、私は母の言葉をそのまま父に伝えました。2人とも私や孫のためにお金を貯めたほうがいいからと言い、夫婦で話し合ったみたいで同居することになったんです。あくまでも自分たちの希望ではないけれど、といった感じに少し笑ってしまいました」

由美佳さんは37歳で両親と一緒に暮らすことになった。そして、現在も上の娘と息子を含む5人暮らしを続けている。同居では無理に一緒を求めないことだけを決めて、それぞれ好きに生活しているという。

「別々に暮らしていた人間同士が同じ家で暮らすのだから、誰かが無理をして合わせることはやめようとだけ決めたんです。だから、仕事を引退した両親が下の息子と3人で晩御飯を食べて、仕事がある私と部活で帰りが遅い娘が後から2人でご飯を食べるようになっています。お風呂もリフォームで増設して、私たち3人と両親は別々のお風呂に入るようにしています。

みんな家族なんだけど、ルームシェアをしているみたい。そのぐらいの気持ちのほうが気楽で楽しくやれています」

年齢差があるとどうしても生活リズムにずれが生じる。年老いた親に子どもは合わせようとすることが多いが、この無理が関係悪化を招いてしまう。由美佳さん家族はそれぞれが離れて暮らしていた期間があったことでそれぞれが自分のペースを大切にし、それぞれが個々のペースを尊重することができていた。たまに一緒に食事をとる、このぐらいの関係が一番いいのかもしれない。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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