同じ境遇だったからこそ、大人になってからわかり合えた
そんな兄と連絡を頻繁に取り合うようになったのは、お互いの結婚が決まったときだった。たまたま同時期に結婚が決まり、その相談から距離が縮まったという。
「たまたま同じ時期に結婚が決まったのですが、同じ境遇だからこそ深い部分まで相談し合えたんです。別れた両親を結婚式に呼ぶにはどうしたらいいのか、母の再婚相手の存在などなど。それにお互いのパートナーも加わり、すっかり意気投合して、兄夫婦と私たち夫婦は大人になってからできた友人のような関係になりました」
それから、それぞれの家族が集まる機会も増えていった。そして、2年前に家族揃って父親を看取れたという。
「あのまま疎遠で、葬儀で久しぶりに会った関係であれば、相続について大変だったろうなって思います。父は最後まで再婚せずに、晩年はそれぞれの孫たちに囲まれて幸せそうでした。兄と一緒に看取ることができてよかったと思います」
離婚する際に、きょうだいを離すことは子どもに大きな負担を与える可能性がある。幼少期のきょうだいは精神面でのつながりが強く、子どもに親だけでなくきょうだいとも離れるという心理的負担を与えるからだ。しかし、美貴さんは「親を恨んでいない」という。
「兄が父と暮らすことを選んで、親はそれを尊重してくれただけ。兄が父と、私が母と一緒にいたことで、どちらの親とも疎遠にならずにすんだと思っています」
きょうだいが大人になってから再び仲良くなれるケースは稀だが、ずっと仲良くしていたきょうだいでも大人になってから金銭問題や相続問題で不仲になってしまうこともある。きょうだいの結びつきに、一緒にいた時間の長さは重要ではないのかもしれない。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。
