取材・文/ふじのあやこ

写真はイメージです。

一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、家族のこと。過去と今の関係性の変化を当事者に語ってもらう。

アート引越センター株式会社のシンクタンクである「0123引越文化研究所」では、親との同居に関するアンケート(実施日:2024年11月下旬、有効回答数:75歳以上の親を持つ全国の男女500人、インターネット調査)を実施。アンケートで、現在両親と同居しているかを質問したところ67.8%が「同居していない」と回答。親と同居していない割合は、未婚者(44.9%)よりも既婚者(85.2%)のほうが高い結果となった。次いで、今後親との同居を検討しているかの問いに対しては、「全く考えていない(46.3%)」「あまり考えていない(38.3%)」と約8割が検討していない結果に。「自身が実家に戻ることを考えている(8.0%)」「親と一緒に新しい住居を探すことを考えている(4.4%)」「親を現在の住居に呼ぶことを考えている(2.9%)」という同居を考えている派とは大きく差が開いている。

今回お話を伺った沙也加さん(仮名・46歳)は、20~30代前半は結婚よりも仕事を選んでいた。しかし、仕事の配置換えがあり、仕事に対するやる気が消滅。同時期に母親が骨折したことで仕事を辞め、一時的に実家に戻る決意をしていた。【~その1~はこちら

気力を失っていく母親を見て、再同居を決意

母親のために実家に戻ろうと決めたとき、両親は60代後半。父親はまだ仕事をしていたため、実家の家事や母親の面倒を父親1人に任せられないという思いがあった。

「父親は定年を迎えてからも嘱託社員として週休3日で働いていました。父親だけで母親の世話をするのは大変だと思ったんです。私は帰省することに対して親の許可を取ることなく、仕事を辞めることも事後報告で実家に戻りました。両親は私の行動にも、仕事を辞めることにもとても驚いていましたが、帰ってきたことを喜んでくれていました」

沙也加さんの帰省はあくまでも母親の足が治るまでの予定だった。東京の家はそのままにして、実家に戻っていた。

「母親は太ももを骨折して、手術とリハビリで1か月以上入院していて、その後もリハビリの通院が必要だったので、退職の意思を伝えてから退職するまでの間は休みの日や有給を使って実家に戻っていました。

仕事を辞めた後も、次の仕事は東京で探すつもりでした。だから東京の家はそのまま残していたんです」

母親はリハビリにも積極的に取り組んでいたが、思うように体が動かないことに対して気弱になっていったという。その姿を見て、沙也加さんは完全に実家に戻ることを決意する。

「母親は外出することも人に会うのも大好きだったのに、動くことが億劫になっていきました。リハビリで疲れていることはもちろん、思うように体を動かせないことへのストレスもあったんだと思います。それから『もう若くない』『年寄りだから』と年齢のことをよく口にするようになったんです。父親はその言葉を聞いて、同調することも否定することもなく、少し困った顔をしていました。そんな2人を見て、親の側にいるべきだなと思ったんです」

【些細な生活音にもイライラした。次ページに続きます】

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